「黒字亡国」三國陽夫(文春新書)2006年01月04日

日本は供給過剰の工業製品をアメリカに輸出して貿易黒字になっている。その代金のドルがどんどん溜まるが、買うものが無いのでアメリカの国債を買ってドルをアメリカに戻している。日本人がどれだけ働いてもラクにならないのは、そのせいである。

なぜそうなるかというと、日本の工業製品を作る能力(つまり会社)が過剰だからである。日本人は外国に売るための工業製品を作る仕事ばかりしている状態から、自分たちの生活を豊かにするための仕事をする人が増えるように変化しなくてはならないのだ。(僕自身、輸出比率の高いメーカーに勤めているので、全然他人のせいにできない)

「マネーを生みだす怪物」G・エドワード・グリフィン2006年01月07日

副題は「連邦準備制度という壮大な詐欺システム」。連邦準備制度(FRS)はアメリカの中央銀行で、日本でいうと日銀だが、FRSはアメリカの公的機関じゃないというからビックリ。著者はFRSはアメリカの銀行のカルテルであって、公共の利益に反するし、経済を混乱させ、戦争を助長するから廃止すべきであるという。

廃止してどうするかというと、ドルを兌換紙幣に戻すべきだというのである。そうすればドル紙幣を無限に刷ることはできなくなる。インフレやバブルが発生しなくなり、戦費を簡単に調達することができないから戦争もやりにくくなる。著者は「金または銀の裏づけなしにマネーを発行するのは憲法違反だ」と指摘する。

日本人が働けど働けどハッピーにならないのは「実質的に価値のあるものに交換できない」ドルを溜め込んでいるせいだから、我々にも関係ある話だ。仮にドルが兌換紙幣に戻ったら、アメリカはドルを無限に刷って外国製品を買うことができなくなり、輸出に頼る日本経済も短期的には困ったことになる。でも長期的にはその方が良さそうだ。

わさび漬け2006年01月09日

スーパーの酒売り場に天野酒の大吟醸原酒が並んでいたので買ってみた。肴はわさび漬けがいいと奥さんが言うのでそれに従う。わさび漬けといえば、昔よく豊橋に出張していた頃のことを思い出した。帰りに駅前で名物のチクワを買ったら小袋入りのわさび漬けが付いていて、新幹線の中でビールを飲みながら食べたものだった。今回はチクワじゃなくてカマボコを買った。

夕食の時にわさび漬けを付けたカマボコを食べてみたら、ちょっと失敗だった。わさび漬けは酒粕に漬かっているので清酒と味がかぶっているし、チクワよりあっさりしたカマボコにはわさび漬けよりワサビ醤油の方が合う。チクワ+わさび漬け+ビールというのは意外に良くできた組み合わせだったのだ。天野酒大吟醸原酒はうまかった。

「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」ポール・オースター編(柴田元幸訳)2006年01月15日

義父が貸してくれたので読んでみたら面白かった。借りた時は、ポール・オースターの小説かと思った。でもそうじゃなくてポール・オースターがラジオ番組で募集した短い物語(ただし実話)が179入っている。

内容はアメリカの一般庶民の体験だが、そのうちのかなりの割合で「心に残る偶然のできごと」が語られる。偶然の内容は奇跡的な出会い、不幸なめぐり合わせ、正夢、その他いろいろだが、不思議なことが実際に起きたのだという話が多い。

読んだ感じはアメリカの作家の短編集とほとんど変わらない。本当に実話なんだろうか? 事実にしてはでき過ぎた偶然が様々なところで起きているんだなあ。

「The Beatles Anthology 1&2」DVD2006年01月22日

名作と聞いていたので前から欲しかった。5枚組みDVD-BOXが15000円もするので買わずにいたが、アマゾンで「DVD20%OFF」セールをやっていたので購入。

1、2はアマチュア時代からメンバー交代を経てメジャーデビュー、アメリカでチャート1位を取るまで。僕は30年前(14歳)からのビートルズファンで大体のことは知っているのだが、メンバーの回想インタビューと過去の映像の編集が良くできているし、演奏シーンもたっぷりあって楽しめる。

ステージ衣装は最初革ジャンだけど、レコードデビューしてからはほとんどスーツなんだな。それもズボンがすごく細い。あれはビートルズ流なのか、当時のスタイルなのか?

ビートルズが成功した最大の要因は歌がすごくうまいことと4人とも明るくてユーモアのセンスがあることじゃなかろうか。

ビートルズのアルバムでは後の方のヤツが好きだったのだが、このDVDを見て初期のロケンロールなアルバムもちゃんと買い揃えようと思った。

「超バカの壁」養老孟司(新潮新書)2006年01月23日

なんか養老先生暴走気味なんではなかろうか。こわいもの無しの言いたい放題である。だいたいいつもベランメエ調でスパッと切り捨てるような物言いだが、今回は特に言い過ぎで、しかもそれを自覚していろいろフォローの説明が入るところが面白い。後書きによると「バカの壁」「死の壁」とこの本の3部作はしゃべったことを文章に直したものなのだった。

先生は「自分探し」に対して批判的で、ことあるごとに「ナンバーワンよりオンリーワン」という「世界にひとつだけの花」の歌詞を挙げて批判しているのがちょっと可笑しい。一方で「ひとつのことを真面目にやっていると、いつかは時が来る」みたいなフォローもするのが昔と違うところ。