「佐賀のがばいばあちゃん」(徳間文庫) 島田洋七2007年05月07日

息子が学校の図書室から「がばいばあちゃん」を借りてきて、面白いから読めと言うので読んでみたら、面白かった。高度成長以前の貧乏な生活を知恵と笑いで乗り切る話なわけだが、これが受けているのは昭和回顧ブームとワーキングプアな社会状況にぴったり合うからだろう。

このばあちゃんはたしかに大した人物だ。でもそれだけじゃなくて、主人公の少年(筆者)もすごく素直な愛すべき性格である。その辺はフィクションとしてよくできているのか天然なのか、どこまで本当でどれだけネタなのかがよくわからない。文章もシンプルで読みやすいが、これも島田洋七が本当に書いているのか口述なのかわからない。どちらにしてもスラスラと気持ちよく読める。

息子は続編も読みたいといって本屋で「がばいばあちゃんの笑顔で生きんしゃい」と「がばいばあちゃんの幸せのトランク」も買ってきた。「笑顔で」は2作目だが、内容がかなり1作目と重なっている。はっきり言って二番煎じで面白くない。「幸せのトランク」は筆者の奥さんが登場する。これがまたがばい人で、ホンマかいなネタとちゃうん?と思うが、ストーリー展開がよくできていて楽しめた。

「蹴りたい背中」 綿矢りさ (河出文庫)2007年05月09日

「インストール」が面白かったのでこの本も文庫になったら読もうと思っていた。アマゾンから本が届いた夜、居間でウィスキーをちびちび舐めながら読み始めたら、テレビの筑紫哲也の番組で綿矢りさのインタビューが始まった。関西アクセントでおっとりした感じの話し方である。多分京都弁だろうと思って文庫本のカバーに書かれたプロフィールを見ると京都出身と書いてある。主人公の性格にも京都人らしいところが出ている。

「インストール」と同様に今時の子どもの閉塞感のある日常のお話で、視野は狭いが感覚は繊細というところも相変わらず。ストーリーの捉まえ方というか切り取り方がうまい。偶然の扱いもうまい。そのうちに海外でも読まれるようになるような気がする。

朝日新聞のインタビューによると、「書いてる時は夢見てるみたいで、自分の夢なんだけどこの先どうなるかわからない」というのだが、これは村上春樹が言っていることと全く同じである。今後が楽しみだが、大学を出て専業作家になった人が人生経験を積むのに、ミリオンセラーの印税で遊びまくらないとしたらどうするのだろうか。この人はそういう村上龍タイプではないだろうし。

「デニム」 竹内まりや2007年05月29日

タツローの作品だと思って竹内まりやのアルバムを買う。実際、タツローの曲にそっくりの曲がたくさんある。タツロー本人がアレンジしてコーラスも付けているのだからしょうがないが、他人だったらパクリと言えるくらい似過ぎている。山下家の家庭内手工業的音楽である。

僕はタツローのアルバムは全部フォローしているのだが、デジタル化してからの音はいつまでたっても好きになれない。音の分離が良すぎて楽器と楽器の隙間が真空みたいに感じられる。

歌詞はいわゆるスローライフ系コンセプトの曲と得意のテレビドラマ風恋愛ソングが半々といったところで、聴いていると何となく女性雑誌を読んでいるような気がしてくる。でも「50になるのも悪くない」と歌っている「人生の扉」はなかなか良かった。