「夢を見るために 毎朝僕は目覚めるのです」 村上春樹2010年10月05日

村上春樹インタビュー集 1997-2009。最近のハルキさんはエッセイを書かないし、期間限定ウェブサイトもやらなくなったので、分厚いインタビュー集が読めて嬉しい。

ハルキさん曰く、人間存在は2階建ての家である。1階はみんなで集まる場所。2階は一人になるための個室や寝室。地下室は日常使わないが時々入ってぼんやりするところ。更にその下に別の地下室があるのだが、非常に特殊な扉があって分かりにくい。普通はなかなか入れないし、入らずに終わってしまう人もいる。

その地下2階に何かの拍子で入ってしまうと、そこには暗がりがある。前近代の人がフィジカルに味わっていた暗闇で、その中をめぐると普通の家の中では見られないものを人は体験する。その体験は頭で処理できない。ハルキさんはその体験を物語にしているのだという。

今世界中で村上作品が読まれているのは、近代システムの崩壊によって前近代的暗闇を体験する人が増えているからではなかろうか。

僕は村上作品では「ねじまき鳥」までが好きで、それ以降のはどうもよく分からなかったのだが、ハルキさんによると「ねじまき鳥」までで『僕』的価値観の追求は終了したとのことである。そこから先は、連帯感のような新しい価値観を創りだそうとしているらしい。そう言われると少し分かるような気がする。

坂本龍一 音楽の学校2010年10月11日

坂本教授の音楽講義。なかなか面白い。

ドラムズ&ベースの回に「低音というのはリズム、メロディ、ハーモニーに並ぶくらい重要」という話が出てきて納得。僕も最近それに気付いてベースの練習を始めたのだ。

内容は良いのだけど、音が酷い。キョウジュの滑舌が悪いうえに録音も雑。
それと、そもそも買う気は無いけどCD高過ぎ。

「Reimagines Gershwin」 ブライアン・ウィルソン2010年10月14日

ブライアン・ウィルソンがガーシュインの曲をやるというのでクラシカルなのかと思ったら、ビーチボーイズのサウンドだった。しかし、音質がハイファイ過ぎるし演奏がカッチリしているところがビーチボーイズらしくない。ビーチボーイズはもっとゆるい演奏でオフ・マイクじゃないと雰囲気が出ない。そのへんの感じは山下達郎がビーチボーイズをカバーしたのと似ている。 曲もサウンドのクオリティも高いのだが、まとまり過ぎていてちょっと退屈。BGMとして聞き流すのには良い。昔未完だったアルバムを作り直した「スマイル」の方がずっと面白いし、音もちょっと昔風で違和感がない。

タコライス 22010年10月21日

この前、奥さんが子供たちに「我が家の味っていったら何?」と尋ねると、二人とも「タコライス」と答えた。タコライスはその1ヶ月ほど前に初めて作ったのだった。そんなに気に入ったのなら毎週でも良いかと訊いたら良いと言うので、その後、だいたい毎週作っている。その分メニューに悩まなくて済むし、作るのも簡単で助かる。

何度も作っているうちにレシピが進化してきて、鶏ミンチとレッドキドニービーンで作るようになった。ミンチと豆とタマネギみじん切りを炒めて、ケチャップとウスターソースで味付けしたところにギャバンの「チリペッパー」をたっぷり振るとチリコンカーニの味になる。

チリコンカーニというのは「刑事コロンボ」の好物である。子供の頃にテレビでコロンボが食べるのを見て「旨そうだなあ」といつも思っていたのだが、大人になってからウェンディーズで見つけて食べたら、想像通り旨かった。時々食べていたのだが、ウェンディーズは日本から撤退してしまった。

そういうわけで、我が家の味であるタコライスはチリビーン・ライスと呼ぶべきかもしれない。

「Chamber Music Society」 エスペランサ・スポルディング2010年10月22日

アルバムタイトルは「室内楽同好会」という感じかな。ジャズのピアノトリオにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを加えてみました。ジャズとクラシックの融合の試み。これは素晴らしい。静かで美しくカッコイイ音楽。

ジャズは即興性とビートが大事で、クラシックにはそれが無い。融合してどうなったかというと、即興性が無くてビートはある。そこにヴォーカルが乗っているわけだから、結局ポップで統合されているのである。コトリンゴ とおんなじだ。

音楽に限らず、これからは何でもこういう方向に行くんじゃないだろうか。ジャンル分けされたものを再統合してシンプルで分かりやすく表現するということである。統合というのは一人の人間の身体においてなされるものだから、そういう表現は身体を使ってやってみせることで生まれる。

 → エスペランサに関する記事