「In My Element」 ロバート・グラスパー2017年03月16日

ヒップホップの要素を取り入れて新しいジャズを生み出しているロバート・グラスパー。ピアノ・トリオでさらさらと耳になじむメロディーを演奏しているので聴きやすいが、よく聴くといろいろ新鮮なことをやっている。特に、スピード感のあるリズムの展開と、左右それぞれの手が弾くフレーズの絡み合いが印象に残る。

かなりアクロバティックなこともやっているわりに、無機的なテクニック志向にならず音楽的な美しさも保っていて素晴らしい。アルバム全体の雰囲気として、静かでゆったりした感じと、細かい符割による疾走感が両立しているところがカッコイイ。かなり気に入りました。

「Ruth」 ルス・コレヴァ2016年09月10日

ルス・コレヴァはブルガリア出身のソウル歌手らしい。リチャード・スペイヴンというドラマーが気になったので買った。

サウンドは静かでオシャレな感じのポップ。キーボードのV. Helbersという人が書いている曲もなかなか良い。

リチャード・スペイヴンはバスドラムとスネアの音数が多くて、複雑なリズムパターンをリズムマシンのように叩いている。メロディーから外したリズムを叩いたりするうえに、ミキシングもドラムが一番前なのでややうるさいが、そこが面白い。

「Emily's D+Evolution」 エスペランサ2016年03月14日

これは凄い、大傑作。ジャズ、ラテンポップ、ジャズとクラシックの融合、ソウルというスタイルの変遷を経て、今回はロックを取り入れた。ファンクやジャズの要素もあり、シュールなアレンジもありながら、全体としてはポップ。創造的で技術的にも難しいことをやっているのに判りやすく聴かせる、すごい才能だ。

ちなみに、Emilyはエスペランサのミドルネームで、夢に出てきたオルター・エゴ(もう一人の自分)だそうで、D+Evolutionはevolution(進化)とdevolution(退化)をくっつけたもの。

「We Get Requests」 オスカー・ピーターソン2015年11月22日

村上春樹が「村上さんのところ」で、良い音のオーディオとは?という質問に対して、「We Get Requests」のレイ・ブラウンのベースの音がしっかり再生されることと答えていた。ググってみると、ジャズ好きの間では音が良いことで有名な名盤のようだ。聴いてみると確かにスバラシく音が良い。

音楽の録音が良いというのは、簡単にいうと各楽器の音が鮮明で、楽器ごとの音量や残響のコントロールが適切ということだ。僕がいろんなレコードやCDを聴いた経験で思うには、録音の良いアルバムは演奏も良い。録音は悪いけど演奏は良いというのはいくらでもあるのに対して、録音が良いけど演奏はダメというのは聴いたことが無い。

昔から、なんでそういうことになるのか考えているのだけど、演奏者に対する期待というのがまずあって、そこに優秀なレコーディング・エンジニアの技術とモチベーションと、機材と時間が投入されているということなんだと思う。そういうわけで、録音の良いレコードは名盤であるという法則が成り立つ。

さて、内容はタイトル通り、ファンのリクエストで選ばれたスタンダード曲をピアノトリオで演奏している。うまくて楽しそうに弾いている名演なのだが、ピーターソンはテクニックに余裕があり過ぎて、やや細かい技をひけらかしているようにも聴こえる。ちょっとクドイ。抑えめに弾いている曲は文句無しに良い。

ちょっと気になるのは、「コルコバード」と「イパネマの娘」というボサノバの曲を小節の頭にアクセントをつけたリズムで演奏していること。ボサノバじゃなくなっている。ボサノバのリズムが嫌いなのかな。

「Seven Classic Albums」 ハンプトン・ホーズ2015年07月04日

ハンプトン・ホーズというピアニストのことはよく知らなかったのだけど、「Everybody Likes Hampton Haws Vol.3」というアルバムの有名なワニがいい感じに寛いでいるイラストのジャケットが気に入ったので買おうかと思っていたところ、この「Seven Classic Albums」が出た。4枚のCDにアルバムが7枚も入っていて千円程度で買える。これはありがたい。

聴いてみると、どのアルバムもあのワニのイラストのとおりの雰囲気で、とても良い。ホーズさんの演奏は気難しさや押し付けがましい感じが全くなくて、リラックスして聴ける。しかも、リズムのノリが良いので、ずっと聴いていても飽きない。

自分のピアノトリオでやっているやつも良いし、トロンボーンのカーティス・フラー、ベースのチャールズ・ミンガス、スコット・ラファロ、ギターのバーニー・ケッセルがそれぞれ別のアルバムに登場するのだが、どれも良い。

「70 STRONG」 スティーブ・ガッド・バンド2015年06月07日

このアルバム、めちゃ気に入りました。

僕は'86年に出たガッド師匠のリーダー作「ガッド・ギャング」を愛聴しているのだが、それとはちょっと違う。ガッド・ギャングはメロディーがはっきりしていてソウルっぽい音楽だったが、このアルバムはメロディーがほとんど目立たないし、コードも1つか2つを延々と繰り返すことが多いところはファンクですかという感じ。

ベースが派手では無いのでファンクとも違うのだけど、とにかくリズム重視で一貫している。ドラムの神様のリーダー作にふさわしいサウンドともいえる。かといって、ドラムの手数が多いわけでもなく、ガッド師匠は地味なパターンを刻み続けています。要するに、このノリを聴けってことですね。若い頃にドラムを叩いていた僕としては、そうそうこれこれと思ってしまう理想的な音楽だ。こういうのを待っていました!

このゆったりとしたリズム感に興味が無い人には退屈かもしれないが、僕はずーっと聴いていられる。英語でいうところのメスメライジング。それぞれの曲も長いし、11曲74分、CDの容量フルに入っていて満足。バンドのアンサンブルも非常に良い。

「Something for Lester」 レイ・ブラウン2015年04月26日

村上春樹がレイ・ブラウンのベースは良いと言っていたので、リーダー作を買ってみた。たしかに、なかなか良いね。

シダー・ウォルトンのピアノ、エルヴィン・ジョーンズのドラムとのトリオ。曲調は軽快というかポップな雰囲気で聴きやすく、さすがに実力者トリオの余裕が感じられる演奏で素晴らしい。3人の息もピッタリ合っている。

ピアノが左、ドラムが右、ベースが真ん中という変なミキシングはちょっと気になる。ベーシストのリーダー作だからベースを真ん中にしたんだろうけど、ドラムを片側に寄せるのは落ち着かない。

「The Sound Sounds」 トゥイーディーズ2015年04月05日

元シンバルズの沖井礼二が新しく始めたバンド。僕はシンバルズが好きだったので聴いてみたら、期待以上に良かった。シンバルズ同様に洒落たサウンドだが、さらにポップでカラフルなアレンジになっている。シンバルズが’70年代風だとするとトゥイーディーズは’80年代っぽいような気がする。 ヴォーカル清浦夏実はアイドル歌手みたいに聴こえるけど、意外にいろんな歌い方でややこしいメロディやリズムもこなしていて、なかなか良い感じだ。 それぞれの曲のメロディーも良いし、コードが細かく変わるところとか、コーラスの入れ方とか、いろいろ聴いていて楽しい。沖井礼二のベースがめちゃ上手くてかっこいいのも聴きどころ。 2010年代になってから僕が聴いたアルバムで一番気に入った。

「Jarrod Lawson」 ジャロッド・ローソン2015年01月19日

久しぶりにカッコイイ音楽を聴いた。白人だけどソウルっぽいヴォーカルで、裏声を多用した一人多重コーラスも凝っている。バックは打込みじゃなくて生楽器を演奏していて、これがジャズ・フュージョン系で巧いしノリも良い。 スティービー・ワンダーに憧れていたらしいのだけど、たしかにちょっと歌い方が似ているところはある。 歌も巧いしサウンドもよくできていて才能を感じさせるのだけど、何かが足りない。メロディーが弱いんじゃないかと思う。アルバム12曲70分も入っているが、残念ながら、どの曲もメイン・ヴォーカルより伴奏が印象に残り、メロディーが心に残る曲がひとつも無い。 この人はアレンジャー気質というか、まず完成されたサウンドのイメージありきで曲を作っているんじゃないだろうか。メロディーに肉付けしてできた曲だとは思えない。 サウンドは本当にカッコイイので、BGMとして聴くにはサイコー。メロディーが訴えてこない分、邪魔にならない。

「'80年代ポップス再評価」2014年04月28日

「ポピュラー音楽の聴き方」シリーズ、第二弾が出ました。80年代のアルバム下記7枚を詳細に分析して価値を再発見した研究報告です。

「A Long Vacation」 大滝詠一
「Private Eyes」 Hall & Oates
「For You」 山下達郎
「TOTO IV」 TOTO
「Pearl Pierce」 松任谷由実
「Thriller」 Michael Jackson
「Vitamin E・P・O」 EPO

アマゾンにて販売中。

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