「GIRLS' GENERATION」 少女時代 ― 2012年05月11日
一時、うちの奥さんと娘がYouTubeなんかで聴いていた韓流アイドルはノーマークだったのだが、菊地成孔による少女時代の楽曲分析がとても面白かったので、自分でCDを買って聴いてみた。これは良くできている、洋楽クオリティ。一聴してキャッチーで、よく聴くと捻りも効いている。
この人たちは結構歌がうまくて、リズム感も良い。バックの打込みは意外に音が少ないのだが、サウンドが薄っぺらく感じないのはコーラスで頑張っているからだ。コーラスがうまくいっているのは、ボーカルをクールにコントロールできる証拠である。
歌手というのは大きく二通りに分かれる。歌とバックの演奏を一体で捉える人と、歌と伴奏を分けてしまう人である。少女時代は前者で、歌と打込み演奏が良くハモっている。歌を曲の一部としてバックの演奏と調和させるには、強いビブラートをかけたりコブシを回したり派手に強弱を付けたりせず、クールに歌うことが肝要だ。
一方、ボーカリストとしての自己主張が強い人は、そういうことをどんどんやって、伴奏から浮き上がろうとするわけである。歌が上手くないアイドルなんかの場合は、ヘタなせいで伴奏と調和せず、それでかえって個性が出たりする。少女時代の皆さんはそのどちらでもなく、ストイックに音楽性を追求する方向にプロデュースされているようだ。
「Very Best of Charlie Parker」 チャーリー・パーカー ― 2012年05月06日
最近、個人的にジャズブーム継続中なので、モダンジャズの開祖であるチャーリー・パーカーも聴いておこうと思ってベスト盤を探してみた。5枚組とか13枚組とかいろいろあるが、そんなにマニアックに聴きたいわけではない。曲名を見て、菊地成孔がラジオのオープニングに使っている「Bluebird」、矢野沙織がコピーしていた「Donna Lee」、村上春樹の「ピンボール」に出てくる「Just Friends」と短編のタイトルに引いている「On A Slow Boat To China」、チャカ・カーンが歌っていた「A Night In Tunisia」、ビバップの代表的名曲と言われている「Comfirmation」も入っているこの2枚組を買った。ジャケットの中を見ると、菊地成孔と矢野沙織がライナーノーツを書いていた。
'40年代の録音だからローファイだし、4ビートのリズムはシンプルで、1曲3分前後で終わる気軽さもあって、ぼおっと聴いているとほのぼのした感じだが、良く聴くと難しそうなフレーズを楽々と表情豊かに演奏していて凄い。これは末永く楽しめそうだ。
「'FOUR' & MORE」 マイルズ・ディヴィス ― 2012年04月19日
僕は20年以上前からマイルズの「My Funny Valentine」というライブ盤を愛聴しているのだが、なぜか同じライブの別の曲が入ったこのアルバムは今まで聴いていなかった。「My Funny Valentine」はバラードばかりなので、えらく静かなコンサートだなあと思っていたのだが、この「'FOUR' & MORE」はアップテンポで印象がぜんぜん違う。こっちもカッコイイ。というか、両方続けて聴くとコンサートの全体像が分かるわけだな。両方入った「The Complete Concert '64」というCDもちゃんとある。
「Radio Music Society」 エスペランサ・スポルディング ― 2012年04月18日
グラミー新人賞を取って超メジャーになったエスペランサの新譜。いつもながらお洒落で格好良くて高品質な音楽。声が良くて歌が上手く、演奏もうまく、コード進行が複雑。とにかく天才。1作目がピアノトリオのジャズ、2作目はポップ、3作目は室内楽とジャズの融合と来て、今回は2作目の路線に近いが、2作目のちょっとラテンっぽいところは無くなった。2作目はスタジオライブのようなオフマイクで少し残響のある音だったが、今回はオンマイクでデッドな音。なんか'70年代ソウル風に聴こえる。
この人のキャラクターは最初「歌うベーシスト」だったが、前作で「作曲家・編曲家」を前面に持ってきたところ、グラミーで有名になり、今回は完全に「ソウル歌手」として売り出しているようだ。オマケのDVDにアルバム全曲のPVが入っていたので演奏シーンを期待したのだが、連作短編風のドラマ仕立てでガッカリした。
「La memoire de mon bandwagon」 コトリンゴ ― 2012年04月12日
コトリンゴの新作5曲入りミニアルバム。コトリンゴの曲はパターンが豊富だが、大きく分けると打ち込みエレクトロ・ポップとピアノ弾き語りとバンドサウンドがある。僕はバンドサウンドの曲が好きなので、バンドサウンドだけのアルバムを作って欲しいなあと思っていた。このアルバムはベースとドラムを入れたピアノトリオのコトリンゴバンドで作っているので、僕の願いが叶ったわけである。プロモーションの写真なんかも揃いの衣装を着た3人で写っていて、しばらくコトリンゴバンドとして固定メンバーでやりそうな雰囲気だ。
聴いてみると、バンドとはいうものの、今までどおりいろいろな曲調がある。もっとジャズ・フュージョン志向でガンガンやるのかと思ったら、そういうものではなかった。いつもながらコトリンゴのピアノは表現力が豊かでアレンジもイメージが多彩だ。ファンタジックな短編映画に付けた音楽のようである。
それぞれの曲は良いのだが、僕の音楽耳はフルアルバムのサイズに適応し過ぎているので、このミニアルバムという形式は短くて困る。前菜だけで終わりみたいで物足りない。同じメンバーで夏にフルアルバムも出るらしいので、大いに期待します。
「東京大学のアルバート・アイラー 東大ジャズ講義録・歴史編」(文春文庫) 菊地成孔+大谷能生 ― 2012年04月09日
「憂鬱と官能」の続編であるジャズの歴史講座。単にジャズのスタイルがこういう風に変化していきましたという事実の羅列ではなく、アメリカの社会情勢やモダンジャズの「モダン」が表す近代化と音楽のあり方の関係まで、広く深く捉えた音楽史観で話をしてくれて、大変面白い。
最近ほとんど聴いていなかったジャズのCDを探し出して聴いてみることになり、今まで何となく聴いていた曲の構成がよりクリアに聴こえて来るのが値打ちだ。
「MODE FOR JOE」 ジョー・ヘンダーソン ― 2012年03月25日
最近はまっているハードバップの名盤。テナーとトランペットとトロンボーンの重厚なアンサンブルとヴァイブのクールな響きでカッコイイ。管楽器の人たちは単に音符を吹いているわけではなく、時々動物の鳴き声みたいな音色も出してくれるので楽しい。
リズミカルな曲が多くて、聴いていると気分が上向きになる。日曜大工や料理などの軽作業をしながら聴くと仕事がはかどる。
「憂鬱と官能を教えた学校 バークリー・メソッドによって俯瞰される20世紀商業音楽史(上・下)」(河出文庫) 菊池成孔+大谷能生 ― 2012年02月25日
バークリー音楽院はポピュラー音楽の総本山みたいなところで、バークリー・メソッドというのは、ポピュラー音楽のコード進行とメロディーの関係を分析する和声理論である。僕が21世紀になってからフォローするようになった現役ミュージシャンはエスペランサ・スポルディングとコトリンゴなのだが、彼女たちは二人ともバークリー音楽院出身だ。
この本は現在の音楽産業界に流布しているバークリー・メソッドを中心に商業音楽の歴史について語る講義録。バークリー・メソッドの中身の説明をしながら、バッハの平均律クラヴィーアからMIDIに至るまで、商業音楽の歴史について縦横に語っていて、非常に面白かった。
最初の方の長音階、短音階とかトニック、ドミナントとかの話は中学校の時に音楽の授業で楽典をやったときにも習ったクラシックの理論だが、スケールが出てきてだんだんジャズになる。モード技法まで行ってマイルズ・デイヴィスのKind Of Blueの解説があるので聴き直してみると、ナルホドそういうことだったのかとよく判る。
後半はバークリーから少し離れてリズムの話が多いが、これも面白い。他にも僕がポピュラー音楽について断片的に考えていた諸々の事柄について、色々教えられることがあった。
著者は単に無批判にバークリー・メソッドを紹介しているだけではなく、バークリー・メソッドを学んだミュージシャンがコードをどんどん複雑にしたくなることを「バークリー病」と呼んだり、商業音楽を作るためのバークリー・メソッドという教育法はそろそろ役割を終えたんじゃないかとも言っている。
「a night at Birdland vol.1」 アート・ブレイキー ― 2012年02月10日
ジャズの世界では超有名なライブを聴いてみる。冒頭の司会者のアナウンスは聞き覚えがある。How about a big hand there! とにかく演奏がホットで曲も良い。これは本当に良いライブだ。
以前、マイルズ・デイヴィスやビル・エヴァンズなんかのクールで繊細なジャズを熱心に聴いていたことがあるが、最近こういうシンプルで判りやすいスタイルの方が良いと思うようになった。聴いていて寛げる。
1954年という遠い昔のことだからマイク1本で録っているのだが、臨場感があって素晴らしい。
「Moanin'」 Art Blakey And The Jazz Messengers ― 2012年02月03日
デアゴスティーニのブルーノート・ジャズCDコレクションのCMで「Moanin'」が流れているのを聞いて、このあたりのジャズを聴いみようと思って買った。1958年発表だから僕が生まれる前、半世紀以上の昔の音楽だ。
ジャズの良いところは生楽器の音を楽しめるところだと思う。楽器の音が良いのは演奏が上手いからである。リズム感も素晴らしい。そういうところはミュージシャンの身体に支えられているわけである。半世紀経ってポピュラー・ミュージックは進化したのかというと、全然そんなことはない。
こういう古い上等な音楽を聴いていると、音楽が時代と共に進化するものではないのだなあと思えてくる。その時代ごとに時代に合った音楽があるだけなのだろう。今は電気やコンピュータに頼る時代だから、電気やコンピュータに頼った身体性の希薄な音楽が聞こえてくるわけだ。そういうメッセージをジャズ・メッセンジャーから受け取りました。
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