日記2002年07月07日

朝から暑い。セミが鳴いている。もう梅雨が明けてしまったのだ。気象庁が何と言うかは知らないが、僕としてはセミが鳴いたら梅雨明けである。午前中に大阪市内に出かけることにする。駅で新今宮までのキップを買う。買ってからJR連絡切符を買えばよかったのだと気付く。電車の窓からぼおっと外を見ているうちに新今宮を乗り過ごしてしまう。しかたがないので難波まで行き、精算して降りる。連絡切符を買ってなくてよかった。

どんどんいきあたりばったりな人間になりつつあるなあ、昔はこんなことはなかった、と思いつつ四つ橋線の難波駅に向かって歩く。いつもここから地下まで降りて御堂筋線の難波駅の手前まで行ってから四つ橋の方に曲がっていたのだが、よく考えるとそれだとすごく遠回りをしている気がする。今日は地上を歩いて四ツ橋筋に行く。

カバンを2つくくりつけたカ-トを転がしている2人組の女性が歩いている。制服こそ着ていないが、どう見てもキャビン・アテンダントな人たちである。交差点で追いついた時に見ると、カバンに某航空会社のロゴが付いている。関空からの帰りだろうかと思っていると、伊丹行きの空港バスに乗り込んでいった。四ツ橋線難波駅までは、地下を通るよりかなり近かった。

四つ橋線は空いている。1つの車両に10人くらいしか乗っていない。冷房が効きすぎて短パンだと寒いくらいだ。僕の隣(といっても5mくらい離れている)には口ひげをはやしたビジネスマンらしき外国人が座っていて、横文字の本を読んでいる。隣の車両にはいかにも観光客というカジュアルな格好をした白人のおばちゃん4人組が立っていて、すごく楽しそうに何ごとかしゃべっている。

肥後橋で降りて北に向かって歩く。僕は休日のビジネス街を歩くのがわりと好きである。車も人もあまり通らずガランとしているので、何となく古代文明の遺跡を観光しているような気分になる。実際、今となってはここに並んでいるでっかいオフィスビルたちは20世紀文明の遺跡みたいなものである。交差点のところに西洋人男性2人組が座ってペットボトルの水を飲みながら話をしている。交差点で右側の通りを見たらホテルがあって西洋人の観光客がたくさんいた。

彼らが20世紀日本文明の遺跡を観光に来たのでないとすれば何を見に来たのだろうか。大阪で外国人観光客を一番多く見かけるのは大阪城だが、それならここから近い。僕は万博公園に行って太陽の塔と民族学博物館を見ることをお奨めしたいが、そんなところに行く人は少ないような気がする。

堂島のジュンク堂に着く。雑誌「考える人」、橋本治「ああでもなくこうでもなく3」、エレイン・モーガン「人類の起源論争、アクア説はなぜ異端なのか」を買う。新刊の棚に岡本太郎「自分の中に毒を持て」(青春文庫)を発見する。僕はこの本を10年ほど前に買って読んだのだが、昨日本棚の前でなぜか目に付いたので読み返したところだった。こういうのをシンクロニシティというのか。

ジュンク堂の下のラバッツァでパニーニやらイタリアン・サンドイッチやらを家族の昼飯に買って帰る。帰りは梅田まで歩いてJRに乗る。座って本を読んでいると僕の荷物からトマトとモツァレラ・チーズのいい匂いがしてくる。周りの人は迷惑だろうか。でも、大阪の電車で「551の豚まん」のニオイがするのは日常茶飯事だ(横浜でシューマイのニオイがするようなもの)。それよりはマシだろう、と思うことにする。

日記2002年07月27日

和歌山県那賀郡の「青洲の里」なるところに行くことになる。放し飼いのカブトムシを捕まえられる「カブトムシの森」というのが目当てである。車に虫取り網や虫カゴも積み込んで出発。湾岸線から関空連絡道路に入って上之郷で降りようとすると出口がない。反対車線にはある。前に、あそこから降りたことがある。しかたがないので阪和道に入って貝塚まで行き、料金所を出てすぐUタ-ンして、また阪和道を走って上之郷に戻り、さっき見た反対車線の出口から降りる。

そこから峠道に入り和泉山脈を越えて和歌山県に入る。わりとすぐ紀ノ川沿いの平野部に出る。このあたりはどこもかしこも果樹畑だ。もも、かき、ぶどう等々。道路沿いのあちこちに「直売所」がある。しばらく行くと「青洲の里→」とか「医聖華岡青洲生誕の地」という看板が現れる。→に従って進むと真新しい村おこし施設に到着する。閑散とした駐車場の脇に例によって果物や野菜の直売所がある。

車を降りるとアブラゼミがジーっと鳴いている。クマゼミの「シャーシャーシャーシャー」より風情があってよいが、とにかく、ものすごく暑い。子どもたちが虫取り網を持っているのを見て、直売所のおじさんが「その坂、降りていったらカブトムシおるわ」と教えてくれる。降りる途中の斜面は花壇になっていて、様々なハーブが植わっている。「カブトムシの森」とは、林の一角10m四方をフェンスで囲い、天井部分に蚊帳を貼った場所なのだった。

中に入っていくと、飼育係?の兄ちゃんがいて、カブトムシの居場所を教えてくれる。飼育用のケースにたくさんいる他には2、3匹しかいない。兄ちゃんによると、ここでも飼育しているが、他からも取り寄せているとのこと。カブトムシはオス400円、メス200円也。入り口の横に置いてあるラジオから高校野球の和歌山県大会の実況中継が聞こえてくる。

カブトムシは帰りに買いに来ることにして、外に出る。登山道のようなものがあったので、登ってみると、すぐに広場に出る。わりと立派な神社がある。なぜか境内に鐘があり、奥さんが鐘を突く。しばらく散策して、元の道を戻る。娘がダッコダッコというのをなだめながら歩いているうちに、とうとう黙って座り込んでしまった。いつも大きな声で文句を言うのに黙ってしまったので、本当に体調が悪くなったのかもしれないと思い、ダッコして階段を登る。

この施設の中心の建物の中に入る。打ちっ放しコンクリート造りである。僕はコンクリートの匂いがあまり好きではない。テラス付きで天井が高くて明るいレストランに入る。ソーメン天麩羅定食とかお子様ランチを頼む。予想に反してちゃんとした料理で旨い。でも、量のわりには値段が高い。廊下に華岡青洲記念館の説明がある。華岡青洲(はなおかせいしゅう)は200年前、ここで世界初の全身麻酔による手術を行った。麻酔には漢方薬を使った。この建物のそばにその漢方薬の原料になる薬草が植えてある。それにちなんで様々なハーブも植えられているのだった。

ハーブの苗が売られている。うちの奥さんは最近ハーブ栽培に凝っているのでローズマリーの苗を手に取ったのだが、代金を誰に払えばいいのかわからない。奥さんは駐車場に戻って直売所でスモモ(5個100円)、トマト(小6個150円)、タマネギ(小15個100円)を買い、ついでにローズマリーの代金200円を払う。子どもたちと「カブトムシの森」に戻ってオスメス一匹ずつ元気そうなのを選んで買う(メスは翌朝には死んでいた)。腐葉土とクヌギの枝もくれる。ペットボトルのお茶を買って、車に乗り込む。帰りは無駄にうろうろしなかったので1時間くらいで家に着いた。