ウィスキー・ブーム終了2007年09月04日

去年の夏からのマイブームであったシングルモルトウィスキーの探求が終わった。なんで終わったのか考えてみると、僕が酒に弱くて1本空けるのにひと月かかるという問題もあるが、それよりもシングルモルトの世界が思ったより狭かったのだ。

最初はスーパーの酒売り場に置いてあるスコッチシングルモルトを順番に試してみたのだが、それぞれものすごく個性があって楽しかった。次に中級者の領域に入り、専門店に行って何種類か試してみた。そこにはもっと幅広い個性があるものと思ったら、どちらかというと地味で素朴な感じの世界だった。スーパーの酒売り場に並んでいたのはオールスターチームだったわけである。

個人的な結論としては、スコッチではなくアイリッシュのブッシュミルズ・モルトというのが非常に気に入った。煙いピート香が無くて蜂蜜のような甘い香りと樽の木の香りのバランスが絶妙である。飲むたびに「ウマイなあ」と思う。これからも時々飲みたい。あとは、煙い系のボウモアラフロイグを気が向いた時に飲むという程度で充分だ。

今後何をメインに飲むかというと、やっぱり芋焼酎に回帰します。どんな料理にでも合うし頭も痛くならない。

ブッシュミルズモルト 10年2007年01月23日

今までに試したウィスキーは全て、スコッチとその真似である日本のシングルモルトだったが、このブッシュミルズモルトはアイリッシュウィスキー。スーパーの酒売り場にはなく、品揃えの良い酒屋で見つけた時に買った。

アイリッシュがスコッチと違うのは、麦芽を煙で燻していないためにスモーク味が全くないこと。これはかなり大きな差だ。スコッチシングルモルトの世界では、大雑把にいってスモーキーさとモルトの甘みが比例しているようなので、「スモーキーではないのにモルトの甘みはある」というこの味わいは新鮮に感じられる。

もうひとつスコッチとアイリッシュの違いがある。スコッチの蒸留回数は2回だが、アイリッシュは3回蒸留するそうだ。そのせいで口当たりがとても滑らかである。ふーん、蒸留回数で口当たりが違うのか、と思いつつよく考えたらこれは焼酎の甲類乙類の関係と同じだ。乙類(いわゆる本格焼酎)は1回蒸留で味が濃厚、複数回蒸留した甲類は原料の味が無くなってスッキリしている。

そういうわけでこのブッシュミルズモルトはスッキリとシンプルな味である。麦芽の甘みと樽の木の香りだけが感じられ、しかもそのバランスが素晴らしい。正月にお屠蘇として飲んだらお節料理にぴったりだった。でも、味の濃い食べ物には合わないと思う。味の濃い料理の場合は、食後に肴無しで口直しとして飲みたい。口の中に長いこと木の香りが残るのが良い。

タリスカー 10年2007年01月07日

とにかく味が濃い。麦芽の甘みと香ばしさに加えて、吟醸酒のようないい香り、そのうえかなりスモーキーで、ちょっとだけ苦味もある。煙っぽさはアイラ産に近い感じだが、アイラ産と違って薬臭さは無い。シングルモルトの直球ど真ん中。

全体のバランスとしてはニッカの余市に似ている。というか、余市がスコッチシングルモルトのど真ん中を目標にしているわけだ。余市の方が香りが華やかだと思う。白いラベルで紺色がアクセントになったボトルのデザインも余市がタリスカーを意識したのだろうと思わせる傍証。

これでスーパーマーケットの酒売り場の棚でよく見掛ける日英の主なシングルモルトはひととおり試したことになる。その中ではタリスカーが一番気に入った。ラフロイグもいいけど、あの香りは食べ物を選ぶ。タリスカーの方が何にでも合うと思う。

ロングモーン 15年(58.8度)2006年12月20日

味が濃いというシングルモルト。僕の主戦場であるスーパーの酒売り場は当然としても、いろんな酒屋を見て回っても見つからない。結構レアな銘柄のようだ。ネットで調べて大阪市内の店に在庫を発見し、所用で大阪に行くついでに店に寄って買ってきた。趣きのある木箱入り。

味は確かに濃い。甘くて香ばしい麦の味。香りも豊かだが、鼻に付くような香りではなくナッツやスパイスのような落ち着いた香り。アイラ産のようなピートの煙い味はほとんどなくて飲みやすい。ウィスキーって本来こういう味のものだったのだろう。うーん、旨いなあ。早くも最終到達点に近付いているような気がする。ロングモーンを定番にしたいところだけど、なかなか手に入らないのでもう少し開拓する必要がある。

ラフロイグ 10年(カスクストレンクス)2006年11月26日

煙くさく薬くさいアイラ産モルトはボウモアで充分だと思って、もっと薬くさいと言われているラフロイグには手を出していなかった。しかし飲んでみるとこれが旨い。たしかにヨードチンキのようなクレオソートのような消毒薬の臭いは強いが、麦芽の味が他のウィスキーよりもはるかに濃い。気に入った!

スモーキーさもなかなかのもので、飲んでいる時よりも、飲んだ後で自分の息が煙っぽくなって鼻に抜ける感じが強く、それも長く続く。この感じは前に経験があるなあ、と思ってよく考えたらタバコを吸っていた時の感じである。洋モクの甘い煙の臭いに似ている。これって身体に悪くないんだろうか? ちょっと怪しい。

アイラモルトのヨード香というのはクセになる人はなるらしいが、ダメな人はダメだろう。僕は別に気にならないが、特に好きなわけでもない。煙くさい感じは大好きである。それよりこの酒はモルトの味が濃いところが気に入った。でもカスクストレンクス(樽出し原酒)だから57度もあってきつい。ほんのちょっとで酔っ払ってしまう。この味の濃さは原酒ゆえなのだろうか。まあ、水で割れば良いのだが。次は普通の40度のラフロイグを買ってみよう。

余市 10年2006年11月09日

僕は輸入食料品を買うのは好きだが、輸入すると輸送のために余計なエネルギーがいるから国産で済めばそれに越したことはないと思っている(スーパーで野菜を買う時もなるべく近くで採れたものを買うようにしている)。そういうわけで、シングルモルトを飲むにしても日本産で満足できればその方がいいので、日本産も試してみる。

サントリーの山崎、白州はイマイチだった。同程度の年数のスコッチに比べると、なぜじゃ口当たりがピリッとしていて、そのピリピリ感に味が隠れてしまっているような気がした。今度はニッカの余市。昔からウィスキーはサントリーよりニッカの方がうまいというのが通説だが、これはどうだろうか。この前、朝日新聞の日曜版にニッカのウィスキーを最初に作った竹鶴さんの話が出ていたのを読んで、ストーリー的には申し分なしである。

こちら余市10年もややピリッとした感じはあるが、サントリーほどではない。結構スモーキーかつクリアな味でなかなか良い。でも、スコッチ・シングルモルトのような「何これ?」的な個性は無い。日本のシングルモルトなんてそんなに種類があるわけではないので、しょうがない。個性とは多様性の一部ナリ。

(追記)余市が目指したのはタリスカーではないだろうか。

ブナハーブン12年2006年10月25日

アイラ産シングルモルトの中では一番煙くさくないということでどんなもんか買ってみた。たしかに煙っぽさがとても薄い。ボウモアに比べたら10分の1くらいに感じられる。これは面白くない。そのかわりにフルーティな香りがするというわけでもなく、モルトのコクがあるわけでもない。味が薄くて、ほんのちょっとだけクセがある。

全体に素朴な地酒という印象がある。地元の人は気に入って飲んでいそうな気がする。僕はちょっとしか飲めないので、味も香りも薄い酒はあまり飲みたくない。タリスカーみたいに濃いのがいい。

マッカラン12年2006年10月12日

業界では「シングルモルトのロールスロイス」といわれているらしい。華やかな香りがして、全くクセがなく、口当たりがヒジョーに滑らかだ。なるほど。でも飲んでて全然おもしろくない。

このおもしろくない感じは山崎に似ている。そうか、山崎はマッカランを目指しているのだな。そう思ってふとラベルを眺めてみれば、ベージュっぽい白地に金の縁取りというデザインは山崎とそっくり。

飲み比べてみると、山崎も頑張っているのはわかるが、香りが香水っぽくてやや鼻につく。元祖マッカランの方が完成されている。それに元祖の方が安い。マッカランの完勝。

山崎10年 vs 白州10年2006年10月04日

サントリーの白州を飲んでみたいが結構高いので迷っていたら、スーパーで「モルト飲み比べセット」というのを見つけた。山崎と白州の180ml瓶が1本ずつ入っていて2800円くらい。割高だけど、なるべく小さい瓶でいろんな種類を飲みたいから買った。

しかし、後で調べたら山崎10年も白州10年も180mlは定価1100円だった。この「飲みくらべセット」は「山崎」と「白州」と書かれたコルクのコースター2枚付きで高い値段が付けてあったようだ。失敗!

味はどちらもモルトの甘みがしっかり感じられ、少しだけ華やかな香りもする、クセの無い味。目隠しテストをしてみたけど、区別は付きませんでした。

グレンリヴェット12年2006年09月08日

シングルモルトに目覚めてしまい、まだボウモアも4分の1くらいしか飲んでないのに次を買ってしまった。これはスモーキーなボウモアとは全く違って非常にスッキリとフルーティなお酒ですね。吟醸酒みたいに甘い香りがする。麦焼酎にもこういうのがあったような気がする。というかウィスキーって麦焼酎やん。

グレンリヴェットは香りがよくておいしいけど、これならブレンデッドウィスキーを飲んでる感じとそんなに違わないし、麦焼酎でもいいと思う。シングルモルトを飲む醍醐味みたいなものはあまり感じられない。アイラ産のボウモアの方が強烈で面白い。それにしても2種類飲んだだけで、なるほどシングルモルトの個性というのは幅広いということがよくわかって感心した。スーパーの酒売り場にこんな世界があったとは。

ところで買ってきたグレンリヴェットの箱を開けてみると、中におまけのミニチュアボトルが入っていた。これは「グレンリヴェット12年フレンチオークフィニッシュ」で、オーク樽に詰めて香りを付けたもののようだ。飲んでみるとたしかに檜風呂みたいな白木の香りがしておいしかった。