「ツバメ・ノヴェレッテ」 コトリンゴ2013年01月16日

ツバメはもちろん燕のことだけど、ノヴェレッテは何かというと、短編小説のことらしい。英語のnovelの仲間。さらに調べてみると、短編小説みたいな短い曲を表す音楽用語でもあるのだった。プーランクの「3つのノヴェレッテ」をパスカル・ロジェが弾いているCDが手元にあったので、聴いてみると、このツバメ・ノヴェレッテに通じる雰囲気がある。

紙製のCDジャケットが歌詞カード兼絵本になっていて、曲が絵本のサウンドトラックという趣向。ピアノ、ベース、ドラムのコトリンゴ・トリオが基本だが、いつものようにピアノ弾き語りも、打込みもあって多彩だ。

打込みのサンプリング音は生楽器がほとんどで、いつもと違い、あまりエレクトロじゃなくてクラシカル。オーケストラのように聴こえるサウンドも全部打込みのようだから、スコアを自分で書いて、自分でプログラミングしているのだろう。すごい職人芸を持ったアーチストだ。

このアルバムをスタジオで録音している様子を12時間×3日間、ネットで生中継していた。僕は仕事をしながらずーっと観ていたので、そのときにやっていた数曲を聴くと、ツバメが飛んでいるイメージじゃなくて、狭いスタジオで録音している様子が頭に浮かぶ。

 → コトリンゴに関する記事

「La memoire de mon bandwagon」 コトリンゴ2012年04月12日

コトリンゴの新作5曲入りミニアルバム。コトリンゴの曲はパターンが豊富だが、大きく分けると、打ち込みエレクトロ・ポップと、ピアノ弾き語りと、バンドサウンドがある。僕はバンドサウンドの曲が好きなので、バンドサウンドだけのアルバムを作って欲しいなあと思っていた。このアルバムはベースとドラムを入れたピアノトリオのコトリンゴバンドで作っている。プロモーションの写真なんかも揃いの衣装を着た3人で写っていて、しばらくコトリンゴバンドとして固定メンバーでやりそうな雰囲気だ。

聴いてみると、バンドとはいうものの、今までどおりいろいろな曲調がある。もっとジャズ・フュージョン志向でガンガンやるのかと思ったら、そういうものではなかった。いつもながらコトリンゴのピアノは表現力が豊かでアレンジもイメージが多彩だ。ファンタジックな短編映画に付けた音楽のようである。

それぞれの曲は良いのだが、僕の音楽耳はフルアルバムのサイズに適応し過ぎているので、このミニアルバムという形式は短くて困る。前菜だけで終わりみたいで物足りない。同じメンバーで夏にフルアルバムも出るらしいので、大いに期待します。

 → コトリンゴに関する記事

「picnic album 2」 コトリンゴ2011年02月03日

「Picnic Album 1」が邦楽カバーで、今度は洋楽カバー。「Picnic Album 1」よりアレンジが多彩で、選曲も「ラジオスターの悲劇」、ビョークの「ハイパーバラッド」、ジャクソン5の「アイ・ウォント・ユー・バック」など洒落ていて面白い。最近の音楽業界はネタ切れのせいかカバー曲が大はやりだが、新たな解釈で原曲の良さを表現できているものはとても少ない。そういう意味でコトリンゴのカバーは飛び抜けて優れている。サウンドは100%自分の世界なのに原曲の世界観も保っている。すごい才能だ。

 → コトリンゴに関する記事

「picnic album 1」 コトリンゴ2010年09月29日

日本のポップをカバーしている。僕が若い頃に聞いたような古い曲が多い。最近のJ-POPにはあんまり良い曲が無いよね、ということだろうか。賛成します。どの曲も静かに歌っているので全体的に地味に感じるが、よく聴くとアレンジのアイデアが豊富で味がある。

坂本龍一と関係の深いファニー・ヴォイスのジャズ系ピアニストということで、矢野顕子と比べてしまうのだが、矢野顕子が他人の曲をカバーすると原形を留めないのに対して、コトリンゴはアレンジを激しく変えているのに原曲の雰囲気を保っている。それはメロディとコードをあまり変えていないからだ。完全オリジナルな自分のサウンドと原曲のイメージが両立していて感心した。

 → コトリンゴ インタビュー

 → コトリンゴに関する記事

「songs in the birdcage」 コトリンゴ2009年12月18日

コトリンゴのデビュー作。去年買って少し聴いたのだが、新作「trick & tweet」に感動したので、もう一度よく聴いてみることにする。

打ち込みエレクトロ・ポップという印象だったが、実はピアノ弾き語りがベースで、そこに静かなリズム・トラックが被せてあったり、生のストリングスが絡んだりする。

コトリンゴの弾き語りはちょっと変わっている。弾き語りの人は「(1)楽器と歌にいっぺんに感情を込めるタイプ 」と「(2) 楽器をクールに弾いて歌に感情を乗せるタイプ」がいて、(2)の方が音楽家としては上級なのだが、コトリンゴは「(3) 歌をクールに歌って、楽器に感情を出す」というとても珍しいタイプである。

コトリンゴは、歌うようにピアノを弾いて、反対に声は楽器として理性的にコントロールしているのである。これはイチローのバッティング・フォームくらい変則的で高度だ。なかなか真似できるものではない。

ピアノは小さい音で遠くに聴こえるように控え目に録音されていてあまり目立たないのだが、よく聴くと凄い。ワイルドに弾きまくっているときほど音が小さいところにバランス感覚と美意識が感じられる。

静かな曲ばかりなので聞き流すと地味な印象だが、じっくり向き合って聴くとだんだん細部が見えて、真価が分かってきた。

 → コトリンゴに関する記事

「trick & tweet」 コトリンゴ2009年11月07日

これは傑作。

デビュー作は打ち込みポップで、2作目では生楽器の分量が多くなり、今回は生楽器主体になった。今まではジャズとクラシックの要素が感じられたが、エレキギターを使うようになってロックっぽい雰囲気も加わった。イメージ豊かなサウンドであることは変わらず、できあがった音楽の品質はますます良くなっている。ジャズもクラシックもロックもコンピュータ・ミュージックも、コトリンゴのフワフワ声を中心とするポップに統合されてしまった。

作詞、作曲、編曲、歌、演奏の全てに才能が感じられる。色々な才能があるということではなくて、「音楽」という一つの才能を色々な形で表すための努力を積み重ねた結果だろうと思う。しかし、その核にある才能は天性のものであるような気がする。天才と努力によって創造的でありながらポップな表現に到達しているのではないか。

この人の音楽は色々な意味で良くできているが、特に優れているのは編曲だ。音の組み合わせ方が立体的かつストーリー性が感じられて面白い。ジャンルやフォーマットに囚われず曲ごとに違うアプローチで音を描いていて、しかも14曲もあるので内容が膨大である。数回聴いたくらいでは全然消化できず、20回くらい聴いてやっと全貌を把握しつつある。聴けば聴くほど良さが分かる。

 → コトリンゴに関する記事

「nemurugirl」 コトリンゴ2008年11月23日

内向的な1枚目とポップな2枚目のアルバムの間に出た6曲入りミニアルバム。全体の雰囲気も2枚のアルバムの間くらいの感じ。6曲しかないけど曲調が多彩で素晴らしい。

1 runnaway girl :
 ビートルズのShe's leaving homeに似ている。
 ピアノ弾き語りのワルツ。

2 chocolate:
 スピード感があるフュージョン調、ドラマチックな展開。
 7拍子でとてもカッコイイ。

3 snowman:
 ヒップホップ風打ち込みサウンド。
 おもちゃのようなサンプリング音のリズムが気持ち良い。
 1曲目の歌詞と話が呼応しているのが面白い。

4 itsumo:
 静かなピアノ弾き語り。この人のバラード曲はメロディも美しいし、
 リズムも腰が座っていて非常に良い。

5 jump jump:
 エレクトロ・ポップ。盛り上がったりゆったりしたり、
 緩急自在の不思議なアレンジが愉しい。

6 ふわふわsong:
 ミスタードーナツのCMの曲。
 「フワフワ、フワフワ」言っているだけだが、よく聴くとジャズで渋い。

コトリンゴの音楽はメロディ、リズム、アレンジ、音色、言葉の使い方など、全てが耳に気持ち良い。ピアノもめちゃ上手い。聴いていると美味しいものを食べているときのように嬉しくなる。

 → コトリンゴに関する記事

「Sweet Nest」 コトリンゴ2008年09月12日

偶然見たテレビの音楽番組で、ピアノを弾きながら歌うところが数十秒だけ紹介されたのを聞いて、すぐに気に入った。iTunes Storeで試聴してみたらすごく良さそうなので、新しいアルバムが出るのを待ってCDを買った。

子どもみたいな声で静かに歌っているが、とても上手くて安心して聴ける。ピアノで作りました系のポップな曲が僕のツボにはまる。編曲も自分でやっているようだが、バンドサウンドもエレクトロも良い。オリジナリティがありながらポップで分かりやすい。

まだデビューして2年だというのにかなりアイデアとテクニックとバランス感覚がある。爆発的なパワーは無いけど、これからだんだん有名になって長く活躍するのは間違いないでしょう。☆☆☆☆☆!

デビューアルバム「songs in the birdcage」も買った。ピアノとちょっとしたリズムトラックだけという感じで、「Sweet Nest」ほどポップではなく通好みな雰囲気だが、これもなかなか良い。

 → コトリンゴに関する記事