「耳で考える」 養老孟司 久石譲 (角川oneテーマ21)2009年09月23日

最近、音楽って何?ということを考えていたので楽しみに読んだ。音楽は抽象性が強く、ほとんど自然を参照していないところが他の芸術と異なるような気がする。これは一体何なのか。その件についての突っ込みは浅かったが、他に面白い話はいろいろあった。

久石譲が、完成度の高い曲は楽譜をパッと見て判るといっているのが興味深い。音符の並び方が美しいのだそうだ。これは僕の専門である機械設計でも同じことがいえる。ややこしい図面でもパッと見ればその美しさで何となく完成度が判る。

耳や音楽の話とは別に、久石譲が村上春樹と宮崎駿の作品のシンクロニシティを指摘しているのが面白かった。具体的な共通性はあまり言わないが、例えば作家性の強い「海辺のカフカ」と「千と千尋の神隠し」は同時期に作られている。たしかにどちらも子どもが試練に会って魑魅魍魎が出てくるワケの判らない話なのに世界的に受けた。

僕は村上春樹と奥田民生がシンクロしていると思うのだが、村上春樹と宮崎駿の表現上の共通性はそれほどでもない。これは村上春樹と奥田民生が耳の人であるのに対して、宮崎駿は目の人だからではないだろうか。

 → 「虫眼とアニ眼」 養老孟司・宮崎駿

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