「西洋音楽史」岡田暁生(中公新書)2006年04月02日

副題が「『クラシック』の黄昏」というくらいで、クラシックはもう終わりだという認識のもとに、クラシック音楽がどういう風に変化してきたのかを語っている。専門用語を使わず率直で断定的な文章で書かれていて面白い。僕はクラシックはあまり聴かないが、音楽の構造がどう発展してきたかがよく判る。

最後の章でポピュラー音楽にも触れていて、ドレミ音階を使ってドミソ等の和音で構成されるポピュラー音楽はクラシックのロマン派を継承しているという話はナルホド。

クラシックは200年くらいかけて発展して末に行き詰まったというわけだが、他のジャンルでもジャズはマイルズがポップ・ロックはビートルズがひととおりやり尽くして行き詰ったのは同じである。その先の可能性がラップにあるとも思えないし、いったいどうなるのだろう?

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「はじめてのやのあきこ」矢野顕子2006年04月09日

ピアノ弾き語りで自分の曲をマッキー、小田和正、YUKI、陽水、キヨシローとそれぞれ一緒に歌っている。矢野顕子の歌い方はクセがあるので素直に歌うマッキーと小田和正はうまくなじんでいないようだが、もともとアクの強い陽水とキヨシローは余裕で合わせている。YUKIは矢野顕子になりきろうとしている感じだ。

面白いのは上原ひろみが出てくること。さすがに歌わないが、やっぱり類が友を呼んだ。一緒に弾いているところでは上原ひろみのパワーに矢野顕子が付いていけてない。そういえばこの前、スカパーで矢野顕子のライブを見ていたら「上原ひろみさんとレコーディングをして、ピアノ演奏の指導をされた」と話していた。

このタイトルはどういう意味だろうか。矢野顕子が他の人と共演するのは初めてじゃないし。「共演している人たちのファンにとって初めて」の矢野顕子っていうことか。つまり新しいファンの開拓を目指しているのかな。それなら相手の曲も歌って12曲入りくらいにすれば良かったのに。

それにしても、7曲しか入っていないのに2600円は高すぎる。うちの奥さんが欲しいと言うので、アマゾンの「5000円分購入で500円引きセール」の時に木村カエラの新譜と一緒に買ったのだが、今iTunes Music Storeを見てみたら1200円で売ってるやん! それくらいが妥当。奥さんは気に入っているみたいだが。

「Morph The Cat」Donald Fagen2006年04月15日

ナイトフライ(1982)、カマキリアド(1993)に続くソロ三部作の三作目とのこと。一作目から完結まで24年も経っている。スターウォーズ並みだ。スターウォーズの映像は最初(IV)と最後(III)では全然違うが、ドナルド・フェイゲンの方はサウンドが全然変わらないところがすごい。

相変わらず音質はすごくいい。この音質だけでも聴く値打ちがある。昔ながらのエコーをあまりかけないデッドな録音も渋い。曲はいつものようにカッコいい。バックの演奏はシンプルだがめちゃくちゃ上手くて、リズムのキレが素晴らしい。

そういう完成度はスティーリー・ダンも含めれば30年くらい変わってないわけである。進歩がないような気もするが、ネタのいい寿司屋みたいなもので、旨いものを出し続けているんだから進歩なんてする必要もないのだ。

「アナザーマインド」上原ひろみ2006年04月16日

3枚目の「スパイラル」が良かったのでデビュー作を買ってみた。スパイラルは結構ストレートジャズだが、こっちはエレキベースと16ビートドラムの曲が多いのでフュージョンっぽい感がする。例によってとにかく速弾きがすごい。フュージョン系で速弾きだと平板で無感動になりがちだが強弱の付け方や曲の構成に起伏があるのでそうならず活き活きとしている。

ジャケット(US版)の内側に自己紹介みたいな文章が書いてある。彼女は5歳でピアノを始めたのだが、その時の先生が「赤く弾いてごらん」とか「ここはパパみたいに、次のところはママみたいに」という風に指導したという。それでこんなにイメージ豊かに表現できるのかと腑に落ちた。

フォーマットにとらわれない自由な精神が感じられるし、ユーモアもある。面白いなあ。今後も楽しみだ。2枚目も聴くしかない。