「あのひとと語った素敵な日本語」 あのひと+ユビキタ・スタジオ ― 2006年07月11日
「あのひと」が誰なのかはこの本のどこにも書かれていないが、実は彼女は村上春樹の奥さんのヨーコさんなのだった。何で作家の奥さんであるというだけでこんな本を出すのかという疑問もわくが、この奥さんはものの考え方がすごく明晰でやや過激というか極端なところもあり、キャラクターとしてかなり面白い。村上春樹の小説に出てきそうである。
村上春樹のエッセーに書かれているエピソード(昔ジャズ喫茶をやっていて苦労した話とか、夫婦喧嘩のこととか)もいろいろ出てきて楽しめたが、村上春樹のコアなファン以外にはあまり値打ちが無いかもしれない。ヨーコさんは岡本太郎にとっての岡本敏子さんみたいに村上春樹の仕事のサポートをしていてとても忙しそうだ。ヨーコさんのキャラと現在の仕事の状況に焦点を合わせたら、もっと広く読まれる本にできたと思う。
「The Beatles Anthology 5&6」DVD ― 2006年07月17日
ビートルズがライブツアーをやめてしまうあたりの話。彼らはライブが好きなのだが、どこに行っても観客の叫び声で何も聞こえないし、聞こえないからいい加減な演奏をしてしまってもばれないし、そういう状況が続くと技量も落ちる。ホテルに缶詰の生活も面白くない。それでツアーをやめてしまうわけである。レコーディングも凝り始めたのでステージでの再現が難しくなったという問題もあり「これからはスタジオがステージだ」ということになる。
一方、プロモーションのために各地のTV番組に出演しにいくのも手間なので、曲を紹介するフィルムを作って放送局に送り届けた。これがプロモーションヴィデオというものの始まりである。
それから、ライブをやらないかわりに架空のバンドを設定してレコードを作ることをポールが思いついて、サージェントペパーが生まれる。ジョンによると、あのアルバムは世界初のコンセプトアルバムと言われているが、コンセプトといえるのは最初と最後だけであとは実は関係なく、無理やりコンセプトアルバムと宣言しただけなのだそうである。なるほど。
「Splurge」 PUFFY ― 2006年07月20日
パフィーは奥田民生の手を離れてから中途半端なアルバムばかり出すのであまり興味が無くなっていた。アメリカでスターになってレコード会社のやる気が出たのか久々にまともなアルバムを出したので買ってみると、これはイイ、オモロイ!
10人くらいが作曲していて、そのうち半分はアメリカのミュージシャンで、しかも作曲者がそれぞれ自分の曲をプロデュースしている。雰囲気がバラバラになりそうなところだが、ものすごく統一感があるのが不思議だ。パフィーという仮想キャラのイメージが(アメリカのアニメのおかげもあって)しっかり共有されているからだと思う。
日本から参加しているのは草野マサムネ、ギターウルフ、奥田民生、甲本ヒロト、斉藤和義、横山健(この人は知らない、横山剣とは別人らしい)。なんか重心が低い感じの人ばかりである。パフィーの軽さとバランスが取れていいのかもしれない。僕はやっぱりタミオワールド全開の「モグラライク」が一番好きだが、他も充実していて中身が濃いアルバムといえる。
うちはスカパーでカートゥーンネットワークを契約してるので、アニメ「ハイ!ハイ! パフィー アミユミ」を見たことがある。本物のパフィーには似ていない2人組のミュージシャンの女の子たちがドタバタをやる他愛のない子ども向けアニメだ。アニメの前後に本人たちも登場して日本語で1、2分しゃべるのだが(多分アメリカでは字幕が出るのだろう)、いつもの調子でダラダラしているだけである。何でそんなに人気が出たのだろうか。
「SAKURA STAMP」 矢野沙織 ― 2006年07月27日
「報道ステーション」のテーマを吹いている人。まだハタチ前のジャズサックス奏者なんだけど、結構渋い。チャーリー・パーカーが好きで、ビ・バップっていうんですか、50年以上前のジャズを再現しているようだ。自分で作った曲も何曲か入っていて、これがスタンダード・ナンバーのように耳になじむメロディーでなかなかよい。
チャーリー・パーカーの「ドナ・リー」を完コピしたりしていて、後継者不足の伝統工芸の世界に入った期待の若手、という感じがする。今のところそういう志向なので、新しい方向性みたいなものはあまり感じられない。でも作曲のセンスがありそうだから、そのうちに全曲自作のアルバムが出たらまた聴いてみたい。
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