「その数学が戦略を決める」 イアン・エアーズ ― 2008年03月14日
「テラバイトのデータ計算が専門家にとってかわる」という宣伝文句の本。地球温暖化なんかのシミュレーションをするような話かと思ったら、ちょっと違った。いろいろな分野で、デジタル化されたデータの統計処理によって、従来の専門家の直感より的確な判断ができるようになりつつあるという話。かなり面白かった。
過去のデータをコンピュータで分析し、何かと何かの相関を探して、統計的な推定をする。例えば降雨量からワインの値段を予測する、映画の脚本から興行収入を予測する、患者の症状から病気を診断するなど。それが従来の専門家より成績が良いのだそうである。専門家の権威が落ちるが、それはしょうがない。
身近なところではグーグルやアマゾンで我々も統計的に把握されているわけだが、平均値から離れた自分だけの価値観がどこにあるかをはっきりさせておくことも重要だと思う。
アメリカでは政策や教育方法の有効性なんかも統計的に分析して選択したりし始めているそうで、すごく興味深い。政策を実行する前に結果を予測するわけではなく、いろいろやってみて効果を統計的に比較するのである。それはなかなか良いのではないか。統計やらコンピュータがどうというより、試行錯誤の結果を見て決めるというのが良い。
ところで、「絶対計算」というのは訳者の造語かもしれないが、あまり適切な訳語ではないのではないか。データを数えて相関を探すだけのことに「絶対」や「計算」は言い過ぎのような気がする。ググッてみると囲碁の地の数え方にも絶対計算というのがあるようだし。
コメント
_ hijk ― 2008-03-18 07:53
_ ぶんよう ― 2008-03-18 10:32
hijkさんの仰るようなコンピュータ人格って高級「人工無能」ではないですか? その人格が好きな料理とか音楽とか、あるいは持病について話すことはできる?
_ hijk ― 2008-03-18 21:24
程遠いですね!(^_^)
グレッグ・イーガンのSF小説「ディアスポラ」のように
拡張身体性まで丸ごとシミュレートされちゃう世界
だと、本当に人と機械の境界は曖昧になりそう…!?
_ ぶんよう ― 2008-03-19 20:57
_ hijk ― 2008-03-20 14:50
に似ていますが現実世界とも十分にインタフェース
されています。私が読んだSFの中では舞台設定は
最も壮大です!とても難しいですが感動した本です。
人間存在の本質が二重世界で表現されている、と
いうのは私もそんな気がしています!ぶんよう様が
仰る「仮想世界」を「情報世界」と呼んで良いなら
私のイメージもぶんよう様のイメージに近いのかも。
http://www.netlaputa.ne.jp/~hijk/philo/index.html#AInformationWorld
_ ぶんよう ― 2008-03-20 17:10
_ MoMo ― 2008-03-20 17:25
ヤバい経済学とか、行動経済学 とか読みましたか?わりと面白いですよ。
_ ぶんよう ― 2008-03-21 13:37
_ MoMo ― 2008-03-21 21:42
_ ぶんよう ― 2008-03-22 11:58
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まぁいいかと思いますが、専門家の直観も所詮は
大容量計算には敵わない、というのは、ちょっと
人間の尊厳を傷付けられたような気がします(苦笑)。
人工知能研究でのアルゴリズムの工夫ではなく、
超高速・超大容量の演算によって、そんじょそこらの
人間よりも、ずっと知的で、ユーモアもあり、思慮深く
快活で前向きなコンピュータ人格が合成できる日も、
そう遠くはないような気がしてきました…!