「生きるための経済学」 安冨歩 (NHKブックス)2008年06月10日

これは非常に面白い本だった。21世紀に僕が読んだ本の中で一番の知的興奮を覚えた。著者は現代の自由主義経済社会を支える経済学を引っくり返そうとしていて、それは見事に成功していると思う。

自由主義経済の根底には「選択の自由」という価値観があるが、実はそこに問題がある。選択の自由は本当の自由ではない。そのあたりはちょっと哲学的になる。僕も昔いろいろ考えた。自由とは自らの生命力に基づく自発性に従うことである。そのとおり!

この議論はポランニーの暗黙知から創発という概念に繋がっていき、コミュニケーション論になってハラスメントという問題が出てくる。著者は客観的に議論を進めるだけではなく、自分の仕事や家庭生活におけるハラスメントの問題を語る。岸田秀先生の唯幻論みたいに、身を削って生み出された理論であることがわかる。

この人はかなり期待できると思ったので、他の本も読んでみた。「ハラスメントは連鎖する」(光文社新書)、「複雑さを生きる」。どれもすべて通底する話で面白かった。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://bun.asablo.jp/blog/2008/06/10/3571383/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。