「シャンブル」 ユニコーン ― 2009年03月05日
昔のユニコーンは面白いバンドだったが、ちょっとアイデアに走り過ぎてまとまりが欠けていたのであまり気に入らなかった。でもこのアルバムはみんな角が取れたのかうまく音が絡み合っている。リズムがゆったりと落ち着いていて良いし、奥田民生ソロ10年の音作り経験が生かされた深みのあるサウンドもとても良い。
ユニコーンは全員が作詞作曲して歌うというビートルズ・アプローチのバンドだ。昔のユニコーンの民生以外の曲は好きではなかったが、今回は他のメンバーの曲も面白い。作曲とヴォーカルが5種類もあるのにアルバムのトータル感があるというのはよく考えると凄いことだ。多様性と全体性が両立したこのアルバムは日本ロック界の金字塔である、と僕は認定します。
最近、洋邦問わずミュージシャンが復活するのがはやっているが、昔の曲で小遣い稼ぎみたいなことをされても全然面白くない。ユニコーンは15曲全部新曲で曲も演奏も昔より進化していてエライ。60歳までやると言っているからこの先も楽しみだ。
「草枕」 夏目漱石 (新潮文庫) ― 2009年03月10日
「三四郎」が面白かったので、また漱石を読む。「智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。」という有名な文句の続きが知りたかったのである。読んでいくと見たこともないような熟語ががいっぱい出てくる。「澆季溷濁(ぎょうきこんだく)の俗界」とか。漱石は英語教師であって、漢文にも精通していて、現代日本語の文章を作ったわけである。言葉の天才だったのだな。
難しい漢字が続くところは斜めに読むが、ストーリーというようなものはあまりない。主人公の画家が旅に出て、画家の眼で人や景色を見ながら芸術についていろいろ考える。考えるばかりで絵は描かずに漢詩を作ったりしている。教養が邪魔をしている芸術家だなと思っていたら、ラストシーンでちょっとした展開がある。このあとでそれなりに納得のいく絵を描いたのかも知れない。
村治奏一リサイタル 高石アプラホール ― 2009年03月20日
クラシック・ギタリスト村治奏一の演奏会のタダ券2枚を息子が手に入れたので一緒に観に行った。800人収容のホールに300人くらい入っているお客は高齢者がかなり多い。ステージにはピアノ用の椅子と大きなタイムドメインスピーカーが一個置いてある。我が家のキッチンパソコンに繋いであるタイムドメインミニの巨大なヤツだ。
パンフレットの写真は目がパッチリしたイケメン風だが、実物の奏一君は太いフレームの大きな黒縁眼鏡を掛けていて、そんなに男前ではなさそうに見える。
奏一君がピアノ椅子に座る。足置きの台は無いし、脚を組むわけでもない。ギターには30センチくらいのスタンドが付いていて、それを左の太腿に乗せてギターをかなり立てて弾く。第一部は10分以上の長い曲を3曲。しゃべりはほとんど無し。演奏中に遠慮なく咳をする人が何人もいて気になる。ケータイも一回鳴った。奏一君は集中を乱されたのか、静かなフレーズで弦を押さえ損ねて音がビビることが何度かあった。15分休憩の後、第二部は軽い曲。A列車とかオーバー・ザ・レインボウとか。
観客はあまり盛り上がっている感じではなかったのに、プログラムの曲が終わって奏一君が引っ込むとすぐにアンコールの拍手が始まり、1曲弾いて引っ込んだらまたアンコール。2曲弾いてもまたアンコール。今度はギターを持たずに出てきて挨拶だけ。最後は速くて激しい曲で格好良かった。
良い音で上手い演奏だったが、今のところ奏一君はガチガチにテクニックを追求し過ぎて内向的になっている感がある。もう少しリラックスできれば良いと思う。咳をする人のことをやんわり指摘するくらいの余裕が欲しい。
「坊っちゃん」 夏目漱石 (新潮文庫) ― 2009年03月26日
最近のマイブームは漱石。「坊っちゃん」を読むのは中学生の時以来だ。面白くて読み易いが、昔読んだイメージとは大分違う。何かノンビリした話だと思っていたが、かなり酷い人間関係である。坊っちゃんは教師だが生徒とのまともな交流も無い。そんな話やったっけ。
主人公は自分を正義のタフガイだと思っていて、トラブルに巻き込まれ、悪者の存在に気付き、最後はやっつける。読んでいるうちに、これはハードボイルド探偵小説だなと思うようになった。一つのクールな視点を想定して面白い小説を書こうとすると、必然的にハードボイルド・ミステリーになるのかも知れない。
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