「megaphonic」 YUKI2011年09月02日

今までのYUKIのアルバムではエレクトロポップの曲とバンドサウンドの曲が半々くらいに分かれていたが、今回はその区別があまりなく融合している。それは、どの曲もエレクトロポップとバンドサウンドの中間に歩み寄ったアレンジだからだ。このやり方は成功していると思う。アルバム全体にまとまりがあるし、どの曲もポップで良い。行き詰まった感じのポップミュージックの世界で、YUKIが新たな地平を開拓した感じがする。

打ち込みのバンドサウンドに一人多重コーラスを入れるというのは、達郎さんがずっとやってきたことである。実際に聴いた感じが達郎と似ている曲もある。でも、僕はタツローの打ち込みサウンドには不満を感じるのだが、YUKIの場合は大満足である。この違いはどこからくるのか?

YUKIの音楽は文学でいうとファンタジーというか非リアリズムの世界で、そこがエレクトロポップのデジタルサウンドにぴったり合うのだが、達郎はリアリズムなところが合っていないような気がする。達郎さんがエコー控えめなせいでそう感じるのかもしれない。

「Already Free」 デレク・トラックス・バンド2011年09月08日

村上春樹が「おおきなかぶ、むずかしいアボカド」でデレク・トラックス・バンドの新譜が良いと言っていたので聴いてみる。デレク・トラックスはスライドギタリストで、ジャンルでいうとブルース。ブルースといっても軽快な曲もヘビーな曲もあって意外と多彩でなかなか良い。バンドのまとまりもあってリズムのノリが良い。

この分野はあまり知らないのだが、何となく聞き覚えのある雰囲気だ。エリック・クラプトンの音楽に似ている。クラプトンの声を潰して低くした感じ。ウィキペディアを引いてみると、クラプトンのツアーに参加したことがあるらしい。デレクという名前もクラプトンのいた「デレク・アンド・ザ・ドミノズ」から取られたのだそうだ。なるほど。

「I'M WITH YOU」 Red Hot Chili Peppers2011年09月17日

レッチリ5年ぶりのアルバムだが、今までで一番ポップだと思う。聴きやすくて一般受けしそうだ。どんなジャンルでも、ポップさと前衛が両立しているものは名作。

僕が90年代以降ずっとフォローしている海外のバンドはレッチリだけだ。ファンクとロックが融合しているところが良い。激しい音楽のようで、演奏はリラックスしているところも良い。音が薄いのに迫力があるところも良い。めちゃ上手い証拠である。声も楽器の音も良い。

雑誌のインタビューによると、ギタリストが変わったという。ギターを熱心に聴いてないので気付かなかった。ギタリストは7人目らしいが、みんなストラトを弾くのだな。ストラトのペロンペロンした音もレッチリらしさだ。

ところで、レッチリって僕よりだいぶ若いと思い込んでいたのだが、ボーカルのアンソニーとベースのフリーは僕と同じ’62年生まれだったのか!

「うみべのまち」 佐々木マキ2011年09月28日

村上春樹の初期の作品のカバー絵を描いている佐々木マキのマンガ集。帯に村上春樹の推薦文みたいなものが書いてある。春樹作品同様、無国籍な感じの絵の雰囲気が面白い。ひとコマひとコマが、伸ばしたらポスターにできそうなくらいデザインされている。でもコマとコマの間の関連がよくわからない。ストーリーがほとんど無さそうで、めちゃくちゃシュールである。

僕は「ちょっとシュールなくらいがお気楽なのである」と考えているので、シュールな表現に対してはわりと好意的なつもりなのだが、この分厚いマンガ集を読んでいくうちにだんだん困った気持ちになってきた。シュール過ぎて、何が言いたいのかが10パーセントくらいしか分からない。手塚治虫は「作者は狂人だ、連載を止めよ」と言ったらしい。それは非寛容過ぎるが、もうちょっとヒントが欲しいところだ。