「インセプション」 DVD2011年10月03日

僕が唯一DVDを繰り返し見ている映画が「マトリックス」で、その「マトリックス」に似た話らしいので気になっていたところ、アマゾンで990円になっていたので買った。「マトリックス」はコンピュータの中に作られた仮想世界に入り込む話だったが、この映画では夢の中に入る。

椅子にもたれて機械に繋がれて昼寝をしている様子で仮想世界に入り込むというアイデアは「マトリックス」のまんまで芸が無い。仮想世界でドンパチやって元の世界に戻れるかハラハラするというのも同じ。さらにダメなのは、仮想世界の物理法則が現実と同じという点。夢の世界なんだから「マトリックス」のように空を飛べたり鉄砲玉をよけたりできる方が自然だ。

「マトリックス」はストーリーも映像も世界観もオリジナルで壮大だったが、こちらはただの精神分析である。はっきりいって、「マトリックス」より随分スケールの小さい話だし、アイデアも質量ともにかなり劣る。

「Z II」 ユニコーン2011年10月07日

Z」の続編、6曲入りミニアルバム。ユニコーンのコミックバンド的性格を全開している。

「手島いさむ大百科」はギタリスト「てっしー」の自伝的語りを曲にしてしまっている。これは可笑しい。

「レディオ体操」はメロディーがほとんどない奥田民生得意のワンノート・ロック、あるいはお経ソング。プロモーションビデオの人形劇がかわいいが、これはグッチ裕三のハッチポッチステーションの真似かな。

いちばん訳わからんのが「ぶたぶた」だったのだが、イントロはどこかで聞いたことがあると思ったら、ボブ・マーリーの「Redemption Song」だった。その後、豚は豚だから豚語が分かるという歌詞で、ビートルズの「Piggies」を思い出した。そう思って聴けば、曲も明らかに似ている。「Piggies」は金持ち連中を皮肉った歌である。「ぶたぶた」のビデオにも金持ちのイヤミが出てくる。これは「ウォール街占拠運動」にも通じる金持ち批判のプロテストソングなわけだ。でも「こちょこちょこちょこちょ」って何やねん。

「メダカの格好」は童謡「メダカの学校」を下敷きに完全にデモを煽ってる。

「晴天ナリ」はヘイ・ジュードを思わせる雄大な感じの名曲。

面白いアルバムで僕はかなり好きだけど、熱心なファンしか買わないだろうな。

「村上春樹の短編を英語で読む 1979~2011」 加藤典洋2011年10月29日

僕は村上春樹の小説は全て熱心に読むのだが、短編はちょっと苦手だ。長編も短編もシュールで何を言っているのか分かりにくいが、長編は手がかりが多いから何度か読んでいるうちに何となく分かってくる。短編はヒントが少ないので、解答の無い問題集を解いているような気分になるのだ。

村上春樹の小説は謎が多いので、解読本もたくさん出ている。春樹さんは「そんなものを買うくらいなら、そのお金でおいしいものでも食べた方が良いです」とか言っていたが、僕も答えが知りたくて謎解き本を買ってしまう。そういう村上春樹関連本にはハズレも多いのだが、この本はかなり面白くて説得力がある。長編への言及も多く、村上作品全体への理解が一挙に深まったような気がする。600ページもある分厚い本で3600円もするので買うのをためらったが、充分値打ちがあった。

ただ、そんなネタバレというかカンニングペーパーみたいな本を読むことに意味があるのだろうかという疑問も残る。でも、この本を読んで面白がるのは、村上作品を愛読して自分なりに考えて悩んだ人だけだろう。自分で考えもせずに答えだけ解答欄に書きこむカンニングとは違う。自分で考えた答案の答え合わせみたいなものだ。

タイトルに「英語で読む」とあるが、英語はほとんど出てこない。