「神々の沈黙」 ジュリアン・ジェインズ2015年04月13日

村上春樹さんが繰り返し読んでいるという本。言っていることは非常に興味深くて、共感できるものだった。 我々現代人が持っているような意識が生じたのは3千年前くらいのことで、それ以前の人は、右脳から発する幻聴を神の声として聴き、その指示に服従するという「二分心」の状態にあったというのが著者の考え。 著者はその証拠としてギリシャ神話や旧約聖書などの古代の文献の表現を読み解いていく。僕はそのへんの詳細にはあまり興味が持てなかったのでナナメに読んだ。 なぜ神の声が沈黙してしまったのかというと、社会が複雑になって単純に神の声に従っていたのではうまくいかなくなったからだという。 人間が自分の中に持っていた「迷いなく従うことのできる神の声」を失ったことが、我々の根源的な不安の元であり、3千年前くらいから宗教というものが人間の外側に成立してくる理由である。なるほど、そう考えるともの凄く辻褄が合う。 この本の中に「物語化」という言葉が重要な概念として出てくる。我々の意識が、実際の経験の様子ではなく、こうであったはずだと想定した経験の様子を知覚してしまうことである。この本は、村上春樹の小説が表現しようとしていることの説明にもなっているような気がする。

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