「ラフマニノフ ピアノ協奏曲 2番&4番」 ウラディーミル・アシュケナージ2007年01月06日

クラシックで何を聴けばいいのかと思って、試しにアマゾンのクラシックストアをチェックしてみたら、売り上げのトップ10が「のだめカンタービレ」関係の企画盤で占められていてた。その時に企画盤以外で一番上位だったのがこのラフマニノフなのだが、カスタマーレビューを読むとこれも#2が「のだめ」に登場するから売れているのだった。

聴いてみるとなかなか良い。アシュケナージさんの演奏はピアノの鳴りが良くて華麗だしリズムのノリも滑らか。曲も変化に富んだ展開で退屈しない。オーケストラもしっかりと重厚な感じがする。録音のバランスも良くて音もクリア。これは多分名盤の部類でしょう。

Wikipediaによると、ラフマニノフが自信喪失して神経衰弱に陥っているときに心理療法で「あなたは素晴らしいピアノ協奏曲を作る」という暗示を受け、その効果があってこの#2を作ったとのこと。能力があったからこそ暗示が効いたとも考えられるが、才能とは努力し続けられることであるから、暗示というのも大切かもしれない。

タリスカー 10年2007年01月07日

とにかく味が濃い。麦芽の甘みと香ばしさに加えて、吟醸酒のようないい香り、そのうえかなりスモーキーで、ちょっとだけ苦味もある。煙っぽさはアイラ産に近い感じだが、アイラ産と違って薬臭さは無い。シングルモルトの直球ど真ん中。

全体のバランスとしてはニッカの余市に似ている。というか、余市がスコッチシングルモルトのど真ん中を目標にしているわけだ。余市の方が香りが華やかだと思う。白いラベルで紺色がアクセントになったボトルのデザインも余市がタリスカーを意識したのだろうと思わせる傍証。

これでスーパーマーケットの酒売り場の棚でよく見掛ける日英の主なシングルモルトはひととおり試したことになる。その中ではタリスカーが一番気に入った。ラフロイグもいいけど、あの香りは食べ物を選ぶ。タリスカーの方が何にでも合うと思う。

「バッハ:ゴルトベルク変奏曲('55)」グレン・グールド2007年01月17日

歴史的名盤といわれるグールドのデビュー盤を聴いてみる。バッハというと抽象的な感じがするが、グールドのバッハは全然違って、なんかものすごいエネルギーで弾いている。指の筋肉の瞬発力が尋常じゃないのだろう。粒の揃った歯切れの良い16分音符とトリルが怒涛のように流れ出す。歯切れ良すぎて、ピアノがチェンバロみたいな音になっているのが面白い。

グールドはこの曲を分析して「いかなるクライマックスも解決もない音楽」といっているらしい。なるほど、だからバッハは浮世離れした感じがするのか。逆に普通の音楽はクライマックスや解決があるわけだ。その方が音楽の進行方向と我々の日常生活における時間軸が一致する、ということか。

グールドのCDではこのバッハ以外にモーツァルトとブラームスも持っているが、僕が一番気に入ったのはモーツァルト。でも何を弾いてもグールドは独特で面白い。グールドさんの極端な緩急強弱のつけ方は、楽譜の指定を大げさに表現しているのか、独自の解釈で自由にやっているのか、どっちなんでしょうか?

 → ゴルトベルク変奏曲('81)

オリコン訴訟2007年01月22日

オリコンのヒットチャートに疑いを挟む雑誌記事に関連して、オリコンがフリージャーナリストの烏賀陽弘道さんを相手に訴訟を起こしている。この訴訟は事実を明らかにするためというよりも言論を封じるために起こされており(オリコン側がそう認めている)、当ブログは烏賀陽(うがや)さんを支持いたします。詳しくは烏賀陽ジャーナルをご覧下さい。

ブッシュミルズモルト 10年2007年01月23日

今までに試したウィスキーは全て、スコッチとその真似である日本のシングルモルトだったが、このブッシュミルズモルトはアイリッシュウィスキー。スーパーの酒売り場にはなく、品揃えの良い酒屋で見つけた時に買った。

アイリッシュがスコッチと違うのは、麦芽を煙で燻していないためにスモーク味が全くないこと。これはかなり大きな差だ。スコッチシングルモルトの世界では、大雑把にいってスモーキーさとモルトの甘みが比例しているようなので、「スモーキーではないのにモルトの甘みはある」というこの味わいは新鮮に感じられる。

もうひとつスコッチとアイリッシュの違いがある。スコッチの蒸留回数は2回だが、アイリッシュは3回蒸留するそうだ。そのせいで口当たりがとても滑らかである。ふーん、蒸留回数で口当たりが違うのか、と思いつつよく考えたらこれは焼酎の甲類乙類の関係と同じだ。乙類(いわゆる本格焼酎)は1回蒸留で味が濃厚、複数回蒸留した甲類は原料の味が無くなってスッキリしている。

そういうわけでこのブッシュミルズモルトはスッキリとシンプルな味である。麦芽の甘みと樽の木の香りだけが感じられ、しかもそのバランスが素晴らしい。正月にお屠蘇として飲んだらお節料理にぴったりだった。でも、味の濃い食べ物には合わないと思う。味の濃い料理の場合は、食後に肴無しで口直しとして飲みたい。口の中に長いこと木の香りが残るのが良い。

「ラヴェル ピアノ曲全集」 パスカル・ロジェ2007年01月30日

曲目を見ると、なんか文学的な題名が並んでいる。大昔に高橋源一郎の「優雅で感傷的な日本野球」という小説を読んで全く面白くなかった記憶があるが、あの書名はラヴェルの「優雅にして感傷的なワルツ」から来ていたのか。知らなかった。

それから、筒井康隆が「朝のガスパール」なる小説を新聞に連載していたことがあるが、これもラヴェルの「夜のガスパール」のパロディ? どうやらラヴェルというのは文学に引用されがちな素材であるようだ。

というわけで聴いてみると、曲はどれもなかなか良い。分かりやすくてポピュラー音楽に近い。スティングとか坂本龍一の静かな曲はこのあたりの流れなわけですね。それにしても、聞き覚えのある曲がいろいろある。メロディーラインが良いのできっとCMなんかでしょっちゅう使われているのだろう。「亡き王女のためのパヴァーヌ」はカシオペアがやっていた。

ロジェさんの演奏はなかなか良い。クラシックにしてはリズムにグルーブが感じられるような気がする。でも録音がイマイチなのが残念だ。