くいだおれ2008年07月09日

学生時代にバンド仲間の間で「くいだおれ」と呼ばれているドラマーがいた。妙に背筋を伸ばしたまま、腕だけでドラムを叩いているように見えるからだった。

前に勤めていた会社にも「くいだおれ」というあだ名の男がいた。ひょろっと背が高く黒縁眼鏡を掛けていて眉毛が太かったからである。

一回だけ「くいだおれ」に行ったことがある。就職したばかりだったから1985年のことで、同期入社の友人たちとミナミに繰出したものの、どこでご飯を食べたらよいかわからず「くいだおれ」しか思い付かなかったのだった。たしか、1階の食堂で何か洋食を食べたと思う。味は特に印象に残っていない。

その時にくいだおれ人形(その頃にはまだ太郎という名前は付いていなかった)を間近で観察した。くいだおれ人形が叩いているように見える太鼓はチャチな作り物だろういと思ったら意外にもヤマハのスネアドラムだった。僕もヤマハのドラムを使っていたので親近感が湧いた。ただし、実はくいだおれ人形はそのスネアを叩いていない。ドンと鳴るのは背中にしょったバスドラムだ。

道頓堀のあたりをぶらぶらしていて、人混みの奥でくいだおれ人形の鳴らす「チーン、ドン」という音が聞えてくると、何となく祝祭的な気分が醸し出される。くいだおれ人形がいなくなると寂しいという意見が多いようだが、たしかにあのレトロな音がなくなると道頓堀の雰囲気はかなり変わるような気がする。でもよく考えると、もう何年も道頓堀には行っていないし今後行くつもりもないのだった。

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