2008年12月30日

今年は金融危機で大変なことになった。僕は10年前からこういう事態を予測していたし、今年6月には「近いうちにお金システムが激変するのではないか」と書いた。だいたい僕の心配したとおりになっている。今までは僕の話は一般常識的認識とズレていたが、ついに世間と僕の距離が近付いてきた感じがする。

小脳論によると、お金というのは「他人がやってもらいたがっていること」をやると貰える「自分がやってもらいたいことを他人にやってもらえる」券である。

他人がやってもらいたがっていることをやってお金が貯まるのは良いが、そのお金をどこかに投資して増やすというのはちょっとおかしい。お金が殖えたら、自分が他人にやった以上のことを他人にやらせることができてしまう。投資したお金が殖えることにはそういうやましいところがあるのだ。だから経済成長を目指すと問題が起きる。

お金を介する行為は「他人がやってもらいたがっていることをやる」か「自分がやってもらいたいことを他人にやってもらう」のどちらかなので、経済活動の範囲には「自分のやりたいことを自分でやる」が含まれない。ということは、経済成長とは「自分のやりたいことを自分でやる」が社会から減っていくことなのである。やっぱり経済成長というコンセプトは何かがおかしい。

来年以降、経済はマイナス成長になりそうだが、それは経済成長とともに社会から消えていった「自分のやりたいことをやる」が戻ってくるということである。しばらく大変な状況が続くだろうが、我々は何とか生き延びて自分のやりたいことを(お金をかけずに)やるしかない。もうそういう方向性はハッキリしたと思う。

コメント

_ hijk ― 2009-01-07 07:59

非常に興味深い内容なのですが、
ちょっと理解できない点があります。

> お金が殖えたら、自分が他人にやった以上の
> ことを他人にやらせることができてしまう。
> 投資したお金が殖えることにはそういう
> やましいところがあるのだ。

他人にお金を貸したら、利息をつけて返して
もらう、ということ自体に、私は「やましさ」を
感じません。「お金を貸す」ということは、
「他人が使いたがっているお金を一時的に貸す」
「そのために自分が一時的に我慢し、リスクも負う」
ということであり、小脳論の主張とも矛盾はして
いないと思うのです。

ここで言われる「やましさ」が、どういうふうに
生まれるのか、もう少し詳しく教えて頂けると
とても有り難いです。

_ ぶんよう ― 2009-01-07 10:01

コメントありがとうございます。
なるほどそういう疑問はごもっともですね。

小脳論的お金論ではこう考えます。自分の行為とお金を交換するわけですが、その時点で一時的に自分のやりたいことを我慢しています。さらに、そうやって得たお金で将来自分が他人にやってもらいたいことを確実にやってもらえるという保証はありません。つまりお金はそもそも我慢もリスクも内蔵したものなのです。それを引き受けることは、お金をやり取りする社会への参加料みたいなものです。

我慢やリスクは行為じゃないので、お金に換算しようとすると様々な無理が生じます。人生トータルで他人にしてあげた行為と他人にしてもらった行為が釣り合うのがフェアだと考えると、利息によってそのバランスを崩すのはやましいことになります。

_ hijk ― 2009-01-07 15:58

> 我慢やリスクは行為じゃないので、お金に
> 換算しようとすると様々な無理が生じます。

労働などの直接的な行為の方が無理が少ない
ということですね。我慢、リスク、時間の利益など
直接は目に見えないものが交換され、無理して
値をつけている事がバブルなどの問題の本質だ、
ということであれば良く分かります。

抽象的な価値を扱うリスクが、今回の世界恐慌として
顕在化したので、仰る通り、私たちは、直接的な
労働提供や物々交換に近い価値観など、もっと地に
足の着いた金銭感覚を大事にすべきなのでしょうね。

_ ぶんよう ― 2009-01-09 13:33

補足しますと、「行為とお金の交換」がお金の基本機能であり、モノの売買も「モノを探したり作ったり運んだりした行為」とお金の交換であると考えます。

「行為とお金の交換」がお金の基本だとすると、利息の付く貸し借りは、用途外というかメタレベルでのお金の使用です。借りた金を別のところに投資するというのは更にメタなレベルになり、借金して買ったビルを担保に金を借りて...とか無限のメタレベルに上がっていこうとするのがバブルなわけです。そもそも全てのお金を借金として捉える複式簿記システムに問題があるともいえます。

_ のいず ― 2009-01-16 21:00

ごぶさたしてます。
ずっと似たようなことを考えていたんですが
ものすごく分かりやすい表現をされてたので
なるほど納得な感じがしました。

個人的には情報産業も似たようなところがあるなぁと思っていて
お金と同じで概念を扱っていて実態を伴わなず
物理的に何も生み出さないのにお金が発生するのが
気持ち悪いなぁと思ったりしています。

_ ぶんよう ― 2009-01-17 20:29

お久しぶりです。

情報産業の成果は人間がやっていたことが自動化されるとか、店が無くなるとか、便利化・省力化なんですね。ということは、情報産業で発生するお金以上に他の仕事が減って経済活動全体としては縮小しているはず。だから「情報産業で経済成長」というのは原理的にありえない。

でも情報産業もそれなりに手間隙がかかるものなので、その手間と引き換えにお金をもらっても、経済活動としてやましいところは無いと思います。

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