「スティーリー・ダン Aja作曲術と作詞法」 ドン・ブライトハウプト2015年11月02日

スティーリー・ダンのかなりマニアックなファン向けの本だと思う。僕は21世紀に入ったくらいからずーっとスティーリー・ダンを聴き続けていているので、まあまあ熱心なファンとして、何ヶ所か興味深い指摘や、なるほどそうだったのかと思うところもあった。まあ読んで良かったと思う。パソコンの前に座って、「この曲のこの音がどうだ」といった話が出てくるたびにその曲をiTunesで再生しながら読むのがよいようだ。

しかし、正直なところ読みにくい本だ。タイトルからするとAjaの内容にテクニカルに踏み込むのがテーマのように思えるが、和声の話と歌詞の分析と録音時のエピソードなどを思いつくままに語っているだけでなく、スティーリー・ダンの前後の作品との関連、同時代のポピュラー音楽の状況などについて、話があっちこっちに行ったり来たりして散漫極まりない。曲ごとに章を立てれば良かったんじゃないか。

元の文章が思い入れ過剰なくどい文章であるうえに、翻訳も直訳調でギクシャクしているのが残念。最後に冨田恵一の解説があるが、これは非常に読みやすく判りやすい文章で、本文と対照的だ。

「猫と庄造と二人のおんな」 谷崎潤一郎 (新潮文庫)2015年11月01日

前に読んだ「細雪」が面白いうえに、僕が育った阪神間が舞台で親しみやすかったので、また谷崎潤一郎を読んでみた。

猫好きのダメ男と、元の妻と、新しく妻の座に収まろうとする女のごたごた話。そんな話が面白いのかというと、さすが文豪、テンポの良い文体につられて飽きずに読めた。心理描写が細かいので、それだけだと陰鬱になるところだが、ストーリーは喜劇なのでうまくバランスが取れている。

例によって芦屋や六甲あたりの話で、甲子園の野球という言葉も出てくるが、これは高校野球(当時は中等学校)のことらしい。この小説が発表された1936年にプロ野球が始まったのだ。

「鈴木さんにも分かるネットの未来」 川上量生 (岩波新書)2015年10月28日


これはなかなか面白かった。さすがにネット企業を成功させた実業家だけあって、川上量生によるネットについての説明は判りやすくて深い。ネットやITビジネスについての文章で、今までに見たなかで一番説得力があった。

特に良いと思う点は、ネット企業の経営者であるにも関わらず、ネットについてバラ色の未来を語らないことである。多くのネット・IT業界人の主張は論理ではなく宗教的な思い込みやハッタリだと批判している。そういうクールな視点で一貫しているところに好感が持てる。

著者はネットの未来について、こうなるべきだという理想やこうなってほしいという願望ではなく、こうなるだろうという予測をしている。特に、ネットによる企業活動のグローバル化が進むと、国家による徴税権や統治権との衝突が起きて、国家はネット鎖国をしようとするだろうというあたりは、なかなかハードな現実認識だ。タイトルはネットの未来だが、ネットが現実社会にこれだけ深く関わっている以上、バーチャル空間の話ではなくリアル社会の問題になってくるわけだ。

「職業としての小説家」 村上春樹2015年10月06日

自伝的エッセイだが、春樹さんの愛読者にとってはほぼおなじみの内容だ。でも面白かった。

一番のキモだと思ったのは、何かを自由に表現したい人へのアドバイスとして、「自分が何を求めているか」よりも「何かを求めていない自分とはどんなものか」を頭の中でビジュアライズしてはどうかと言っているところ。

これはちょっと禅の公案みたいだけど、僕も最近同じようなことを考えていたところだ。僕の解釈だと、何かを求めているときはその何かにとらわれているのであって、何も求めていないときの方が視野が広く心が自由になるという意味。そういう理屈っぽい言い方だと、はいはいそうですかと頭だけで判ったつもりになりがちだから、ちょっと工夫した表現になっているのだ。

村上作品が世界中で読まれるようになった元を辿ると、アメリカで英訳本が売れたところがスタートらしい。それはアメリカの出版社が翻訳書として売り出したのではなく、村上さん本人が訳者にお金を払って英語版を作り、それを雑誌や出版社に持ち込んで他の英語で書く著者と同じ扱いになるようにして勝負した結果であるようだ。実務能力あるなあ。

ウェブサイトのスマホ対応2015年09月01日

会社のホームページをスマホ対応せなアカンなと思って、いろいろ苦労した結果、何とか最低限の処置はできたようなので、やったことをメモしておこう。

1、HTMLファイルの<head>部にビューポート・タグを書く

<meta name="viewport" content="width=device-width">

2、CSSファイルの中身をコピペして、1つのファイルの中に2つスタイルシートがある状態にし、一方を

@media screen and (min-width: 769px) {  }

の中に入れてPC用にスタイルシートにする。もう一方を

@media screen and (max-width: 768px) {  }

の中に入れてスマホ用にする。

/* PC用スタイル */とか書いておく。

3、スマホ側のスタイルシートを修正する

・画像やリストのfloatをやめる

・画像がはみ出ないように img {max-width: 100%;} と指定

・文字サイズ、改行高さ、paddingなどの調整

4、見栄えの確認にはブラウザの開発モードを使用

chromeでもfirefoxでもF12ボタンで開発モードになり、

cromeのHTMLビューワのメニューにあるスマホアイコン

firefoxはビューワの右の方にあるレスポンシブデザインモードボタン

をクリックして再読み込みすると、スマホ表示になる

「Seven Classic Albums」 ハンプトン・ホーズ2015年07月04日

ハンプトン・ホーズというピアニストのことはよく知らなかったのだけど、「Everybody Likes Hampton Haws Vol.3」というアルバムの有名なワニがいい感じに寛いでいるイラストのジャケットが気に入ったので買おうかと思っていたところ、この「Seven Classic Albums」が出た。4枚のCDにアルバムが7枚も入っていて千円程度で買える。これはありがたい。

聴いてみると、どのアルバムもあのワニのイラストのとおりの雰囲気で、とても良い。ホーズさんの演奏は気難しさや押し付けがましい感じが全くなくて、リラックスして聴ける。しかも、リズムのノリが良いので、ずっと聴いていても飽きない。

自分のピアノトリオでやっているやつも良いし、トロンボーンのカーティス・フラー、ベースのチャールズ・ミンガス、スコット・ラファロ、ギターのバーニー・ケッセルがそれぞれ別のアルバムに登場するのだが、どれも良い。

「70 STRONG」 スティーブ・ガッド・バンド2015年06月07日

このアルバム、めちゃ気に入りました。

僕は'86年に出たガッド師匠のリーダー作「ガッド・ギャング」を愛聴しているのだが、それとはちょっと違う。ガッド・ギャングはメロディーがはっきりしていてソウルっぽい音楽だったが、このアルバムはメロディーがほとんど目立たないし、コードも1つか2つを延々と繰り返すことが多いところはファンクですかという感じ。

ベースが派手では無いのでファンクとも違うのだけど、とにかくリズム重視で一貫している。ドラムの神様のリーダー作にふさわしいサウンドともいえる。かといって、ドラムの手数が多いわけでもなく、ガッド師匠は地味なパターンを刻み続けています。要するに、このノリを聴けってことですね。若い頃にドラムを叩いていた僕としては、そうそうこれこれと思ってしまう理想的な音楽だ。こういうのを待っていました!

このゆったりとしたリズム感に興味が無い人には退屈かもしれないが、僕はずーっと聴いていられる。英語でいうところのメスメライジング。それぞれの曲も長いし、11曲74分、CDの容量フルに入っていて満足。バンドのアンサンブルも非常に良い。

「行人」 夏目漱石2015年05月18日

村上春樹が面白いと言っていたので、読んでみた。数年前、僕の中で漱石ブームだったことがあり、文庫本を次々に買ったのだが、これは買ってなかった。今ではキンドルがあるので、タダで読める。

はじめは語り手そのものが主人公のようで、飄々とした感じの話が続くのだが、次第に他の登場人物がすごく気になってきたかと思うと、さらに別の人がメインの話になってきて、最後は、えー、そこで終わるの?と思ってしまう構成。話が進むうちに視点というか意識の重心が移動していく具合が面白い。

最初の方の場面で天下茶屋とか浜寺とか、南大阪人の僕の生活圏の地名が出てきたのが楽しかった。調べてみると、大阪に来て中之島公会堂や堺の女学校(現在の泉陽高校)で講演した経験を基にしているらしい。病院に友人を見舞う場面や和歌山に行く場面があるが、漱石自身も講演で和歌山に行き、大阪で胃の調子が悪くなって入院したようだ。

「Something for Lester」 レイ・ブラウン2015年04月26日

村上春樹がレイ・ブラウンのベースは良いと言っていたので、リーダー作を買ってみた。たしかに、なかなか良いね。

シダー・ウォルトンのピアノ、エルヴィン・ジョーンズのドラムとのトリオ。曲調は軽快というかポップな雰囲気で聴きやすく、さすがに実力者トリオの余裕が感じられる演奏で素晴らしい。3人の息もピッタリ合っている。

ピアノが左、ドラムが右、ベースが真ん中という変なミキシングはちょっと気になる。ベーシストのリーダー作だからベースを真ん中にしたんだろうけど、ドラムを片側に寄せるのは落ち着かない。

PC起動しない Invalid partition table2015年04月24日

仕事をしようと思ってのPCの電源を入れたら、起動の途中で止まり

Invalid partition table

と表示された。キーボードで何を入れても反応しないので、電源ボタン長押しで再起動してみたが同じ表示が出て止まる。これは困った。

タブレットで「Invalid partition table」を検索すると、周辺機器を外して再起動してみろというアドバイスを発見した。そういわれてプリンタの電源が入っていることに気付いた。プリンタの電源を切ってもう一度PCを起動したらうまくいった。プリンタにカードリーダーのスロットがあるので、ドライブとして認識されているのかな。とにかく解決してよかった。また新しい呪文をひとつ覚えた。