「神々の沈黙」 ジュリアン・ジェインズ2015年04月13日

村上春樹さんが繰り返し読んでいるという本。言っていることは非常に興味深くて、共感できるものだった。 我々現代人が持っているような意識が生じたのは3千年前くらいのことで、それ以前の人は、右脳から発する幻聴を神の声として聴き、その指示に服従するという「二分心」の状態にあったというのが著者の考え。 著者はその証拠としてギリシャ神話や旧約聖書などの古代の文献の表現を読み解いていく。僕はそのへんの詳細にはあまり興味が持てなかったのでナナメに読んだ。 なぜ神の声が沈黙してしまったのかというと、社会が複雑になって単純に神の声に従っていたのではうまくいかなくなったからだという。 人間が自分の中に持っていた「迷いなく従うことのできる神の声」を失ったことが、我々の根源的な不安の元であり、3千年前くらいから宗教というものが人間の外側に成立してくる理由である。なるほど、そう考えるともの凄く辻褄が合う。 この本の中に「物語化」という言葉が重要な概念として出てくる。我々の意識が、実際の経験の様子ではなく、こうであったはずだと想定した経験の様子を知覚してしまうことである。この本は、村上春樹の小説が表現しようとしていることの説明にもなっているような気がする。

「The Sound Sounds」 トゥイーディーズ2015年04月05日

元シンバルズの沖井礼二が新しく始めたバンド。僕はシンバルズが好きだったので聴いてみたら、期待以上に良かった。シンバルズ同様に洒落たサウンドだが、さらにポップでカラフルなアレンジになっている。シンバルズが’70年代風だとするとトゥイーディーズは’80年代っぽいような気がする。 ヴォーカル清浦夏実はアイドル歌手みたいに聴こえるけど、意外にいろんな歌い方でややこしいメロディやリズムもこなしていて、なかなか良い感じだ。 それぞれの曲のメロディーも良いし、コードが細かく変わるところとか、コーラスの入れ方とか、いろいろ聴いていて楽しい。沖井礼二のベースがめちゃ上手くてかっこいいのも聴きどころ。 2010年代になってから僕が聴いたアルバムで一番気に入った。

「小澤征爾さんと、音楽について話をする」 小澤征爾・村上春樹 (新潮文庫)2015年04月03日

僕が持っている900枚くらいのCDのうちクラシックは30枚ほどしかない。しかもそのうち半分はグールド。クラシック音楽を聴いてもあまり楽しくない。クラシック音楽の聴きどころがちょっとは判るかなと思って読んでみた。 クラシックファンじゃないので、興味が続かないところは少し飛ばして読んだが、まあまあ面白かった。村上春樹はジャズ喫茶のマスターだったからジャズに詳しいのは有名だが、クラシックに関してもメチャ詳しい。小澤征爾はガチガチのクラシックの人かと思ったら、シカゴに住んでいたときには毎晩のようにブルースのライブを聴きに行っていたというのが意外だった。 文庫版のオマケで、大西順子と小澤征爾が共演した経緯が書かれていて、これが一番面白かった。 この本を読んで小澤征爾に好感を持ったので、CDを聴いてみようと思って検索したら、80歳記念で80曲入った5枚組CDというのが出ていて手頃なので買った。全般的にメリハリのある活き活きとした演奏で、クラシックにしてはグルーブがあるような気がした。

「ブルースに囚われて」 飯野友幸 編著2015年03月16日

ブルースに人文科学系の学者さんたちが様々な角度から論じている本。最近ブルースに興味があるので、読んでみた。絶版なので古本を買った。 本も薄いし、内容も物足りないけど、黒人英語の話は興味深かった。黒人英語にはアフリカの言語由来の特徴が残っているそうで、なるほどそういうことかと思うことがいろいろあった。 黒人英語の特徴は、例えばこんなものがある。 ・単音の単純化 (th音をtやdで置き換え) ・子音連続の単純化 (westをwes'と発音) ・Be動詞の省略 (She sick) ・Be動詞の原型用法 (She be tired) それから、リズムについて、 白人英語でWhat is she going to do?という文のリズムは  強・弱・弱・強・弱・強 これを黒人英語で What she gon do?と表現する場合のリズムは  強・強・強・強 になる。 カバーの写真がミシシッピ州クラークスデイルのクロスロードなのが良かった。

「Jarrod Lawson」 ジャロッド・ローソン2015年01月19日

久しぶりにカッコイイ音楽を聴いた。白人だけどソウルっぽいヴォーカルで、裏声を多用した一人多重コーラスも凝っている。バックは打込みじゃなくて生楽器を演奏していて、これがジャズ・フュージョン系で巧いしノリも良い。 スティービー・ワンダーに憧れていたらしいのだけど、たしかにちょっと歌い方が似ているところはある。 歌も巧いしサウンドもよくできていて才能を感じさせるのだけど、何かが足りない。メロディーが弱いんじゃないかと思う。アルバム12曲70分も入っているが、残念ながら、どの曲もメイン・ヴォーカルより伴奏が印象に残り、メロディーが心に残る曲がひとつも無い。 この人はアレンジャー気質というか、まず完成されたサウンドのイメージありきで曲を作っているんじゃないだろうか。メロディーに肉付けしてできた曲だとは思えない。 サウンドは本当にカッコイイので、BGMとして聴くにはサイコー。メロディーが訴えてこない分、邪魔にならない。

インストールできない問題2014年12月15日

仕事で使っている3次元CADソフト(Autodesk Inventor LT)が調子悪くなったので、一旦アンインストールしたうえで、再インストールしようとしたところ、既にインストールされていますという表示が出てインストールできない。これは困った。

Autodesk社のサポートページに「再インストールができない場合は、○○というフォルダと、××というレジストリキーを削除してみろ」と書いてある。たしかに○○フォルダがあるので削除する。レジストリは触ったことがないのでちょっと不安になったが、PCに詳しい友人に相談してみると、大丈夫そうなので××キーも削除してみた。でもやっぱり再インストールできない。

同じソフトを使っている仕事仲間も、最近似たようなことが起きて、再インストールできないので、Windowsをリカバリしたという。OSのリカバリはしたくないなあ、何とかならんかなあ。

さっきのサポートページをもう一度よく読むと、最後に「ダメな場合はユーザーフォーラムも見よ」と書いてあったので、ユーザーフォーラムで「再インストールできない」を検索してみると、「マイクロソフトのFixItが効くよ」というアドバイスを発見した。

FixItは「インストールできない、削除できない、またはダウンロードできないプログラムの問題を修正する」というものだそうで、Visual Studioが対象ということになっているけど、どんなソフトでも効き目があるようだ。使ってみると、勝手にPCをスキャンして「問題のソフトはどれですか」という選択肢が出てきて、選んで待っているだけで解決した。

こんな便利なソフトがあるんなら、OSに同梱しとけよ!と思いました。

Google Chrome起動しないのが解決した2014年10月28日

今朝、突然Chromeブラウザが起動しなくなった。他のブラウザを立ちあげてググっても有効な解決策が見つからない。困った。

「chrome.exe」のあるフォルダをよく見ると「new_chrome.exe」というのがいる。これはchromeの更新のときに一時的にできるもののようだ。試しにダブルクリックしてみると、Chromeが起動した。これでほぼ解決。

「new_chrome.exe」の名前を「chrome.exe」に書き換えればいいだけだと思って、まず「chrome.exe」を消去したら、「new_chrome.exe」も一緒に消えてしまった。あわてて右クリックメニューで「削除を取消」したら「chrome.exe」だけが復活した。そいつをダブルクリックしてみるとちゃんと起動した。(Windows 7、Chrome38.0)

「ポピュラー音楽でリラックス」2014年10月18日

リラックスできるポピュラー音楽というのは意外に少ないものです。これならリラックスできるというアルバム14枚を聴き直してみると、今まで気付かなかった共通点を発見できました。「ポピュラー音楽の聴き方」シリーズ3作目。

「ポピュラー音楽の聴き方」シリーズのご紹介はこちら

「'80年代ポップス再評価」2014年04月28日

「ポピュラー音楽の聴き方」シリーズ、第二弾が出ました。80年代のアルバム下記7枚を詳細に分析して価値を再発見した研究報告です。

「A Long Vacation」 大滝詠一
「Private Eyes」 Hall & Oates
「For You」 山下達郎
「TOTO IV」 TOTO
「Pearl Pierce」 松任谷由実
「Thriller」 Michael Jackson
「Vitamin E・P・O」 EPO

アマゾンにて販売中。

「ポピュラー音楽の聴き方」シリーズのご紹介はこちら

「時事ネタ嫌い」 菊地成孔2014年04月05日

菊地成孔の時事ネタの扱いは、社会的な事件を集合的無意識の表象として捉えるのが基本で、表面的な善玉悪玉的な見方ではない。そのあたりは岸田秀的ともいえるが、実際フロイトの名前も時々持ちだしている。

雑誌に連載された社会時評だが、雑誌コラムにありがちな「適当にうまいことを言って、言いっぱなし」というのではなく、世の中を深いところで捉えているし、書籍化に際して事後検証もしていて、かなり面白かった。