「黒字亡国」三國陽夫(文春新書)2006年01月04日

日本は供給過剰の工業製品をアメリカに輸出して貿易黒字になっている。その代金のドルがどんどん溜まるが、買うものが無いのでアメリカの国債を買ってドルをアメリカに戻している。日本人がどれだけ働いてもラクにならないのは、そのせいである。

なぜそうなるかというと、日本の工業製品を作る能力(つまり会社)が過剰だからである。日本人は外国に売るための工業製品を作る仕事ばかりしている状態から、自分たちの生活を豊かにするための仕事をする人が増えるように変化しなくてはならないのだ。(僕自身、輸出比率の高いメーカーに勤めているので、全然他人のせいにできない)

コメント

_ ひめ ― 2006-01-04 21:25

工業国日本。中学で習いました。それは今も変わらないのですね。車は日本性じゃないですか?電化製品も。
それらが余って外国に輸出されてる事が良くないとは知りませんでした。勉強しなくては。

_ 青い山彦 ― 2006-01-08 02:02

ぶんようさん、こんにちは。以前より Web サイトを拝見させていただいておりました。

「黒字亡国」は未読ですが、もし本を読まれた結果ぶんようさんが紹介された所感を持たれたならば自分には悪書と映ります。日本がアメリカから買うもの無いのでアメリカの国債を買ってドルをアメリカに戻していると書かれておりますが、二国間の取り引きにおいて日本がアメリカに対して経常収支の黒字分だけアメリカに資本投資しなければならない必要はありません。ぶんようさんの書き方ですと、アメリカの国債に大して価値がないのに仕方がなく買っているようによめたのですが、アメリカの国債は金融機関が運用で有利だと判断するから買うのであり決して無理強いされた結果で買うものではありません。

国際経済学に関しては私自身も最初の内は直感に反する部分が多くてピンとこなかったことも多かったのですが、未読ならば野口旭の「経済対立は誰が起こすのか」を読んでみてください。もう少し専門的な書籍ですと野口氏も進められている小宮隆太郎の「貿易黒字・赤字の経済学」が断然お薦めです。

本来ならば面識もなしに失礼な部分もございましたが、ぶんようさんのブログの読者数は多いと思われますのであえて投稿させていただきました。

_ ぶんよう ― 2006-01-08 17:15

青い山彦さん、はじめまして。コメントありがとうございます。失礼ということは全然ありませんので気にしないで下さい。

僕は「日本が黒字分だけアメリカに投資する必要がある」とも「無理強いされて米国債を買っている」とも主張していません。青い山彦さんは「買うものが無いので」の部分に引っかかっておられるようなので、ではそこを削除して「日本はアメリカに対して黒字だが、米国債を買ってドルをアメリカに戻している」とすればいかがでしょう?

本当はドルを売って円に換えるべきなのですが、そうすると円高になって輸出立国が成り立たなくなるからドルのまま持っているのですね。でも不換紙幣を溜め込むのは有害で危険というのが世界の(というかヨーロッパの)常識みたいです。それをやると通貨植民地になってしまうと著者は言ってます。だからドルを買い支えるのをやめて円高を受け入れ、輸出頼みじゃなくて内需を拡大するべきだと言うのです。それはつまりサプライサイド重視からデマンドサイド重視への転換であり、僕の言い方に直すと「日本人が自分たちの生活を豊かにするための仕事をするようになる」になります。

青い山彦さんもこの本を読まれることをお奨めします。ついでに「マネーを生みだす怪物」も。要するにドルが不換紙幣であることが最大の問題なんです。これは小脳論における「お金とは利他行為引換券である」という主張とも合います。利他行為引換券を際限無く印刷して使ってはいけないということです。

ところで、僕のブログの読者はあまり多くないと思いますよ。

_ 青い山彦 ― 2006-01-10 01:46

ぶんようさん、ご説明をありがとうございます。書籍は本日買いましたので私の感想を後日当方のブログで掲載させていただきますのでお待ちください。一応今月中を目処にトラックバックの予定ですが、さぼって遅れるかもしれません(笑)。

「本当はドルを売って円に換えるべきなのですが、そうすると円高になって輸出立国が成り立たなくなるからドルのまま持っている」とあるのですが、この箇所に限定しても当方には説得力のある説明ではないので、やはり現時点では悪書にきこえます。

貿易の黒字額が増えたから常に円高になるとは限りません。貿易黒字額が拡大しても、海外投資の拡大から円売り・ドル買いの圧力が強くなれば円安になる可能性もあります。小宮隆太郎の「貿易黒字・赤字の経済学」の p.98 では1980年代の前半の米国では貿易赤字が累積してもドル高が是正されなかった例があげれられています。

また円高になると日本の輸出産業が成り立たなくなるということは長期的にはありません。マクロ経済学では経常収支の大きさは長期的なGDPと内需の差に落ち着き、為替レートの影響は受けないと結論されています。

アメリカの国債を買うなどしてアメリカに投資をしている主体は貿易でアメリカより支払い代金をドルで受け取ったメーカーではなく、そのドルを買った日本の金融機関です。金融機関は日本で金を運用するよりも為替リスク込みでもアメリカで運用した方が良いと判断するからそうするのであって、別に円安・ドル高にするためではありません。

日本の内需の拡大が必要であるという点に関しては自分も同意見ですが、国内投資が盛り上がらないのは未だにデフレが続いているためであり、インフレターゲットを設定するなどしてデフレを克服した暁には自然と現在の日本の経済の苦境は解決すると考えます。

_ ぶんよう ― 2006-01-10 22:54

僕は「貿易黒字が増えたら常に円高になる」とは主張していません。円高になると輸出立国が成り立たないはいい過ぎかもしれませんが、少なくとも手持ちのドルやドル建て資産の価値が減ってしまうので、避けたいわけです。それに、円高がマクロ的に克服されると簡単におっしゃいますが、現場は大変なんですよ。僕は輸出企業に20年勤めていますが、1ドルが250円くらいから80円になったら仕事は3倍しんどくなったというのが実感です。「日出づる国のサラリーマン」にも書きましたが、工場は中国に移ってしまってラインの作業者の大半は失業しましたし、近所の飲み屋や喫茶店もたくさん潰れました。

青い山彦さんは経済学を真面目に勉強されているようですね。僕は上述のようにかなり低いところからものを考えていますので、あまり噛み合わないのでしょう。

金融機関がドル建ての運用で平気なのは、財務省がドル買い介入し続けてドル安にならないと信じきっているからだと思います。

ドルをアメリカに還流させるから日本でお金が回らなくてデフレになる、と「黒字亡国」の著者は言ってます。何にせよ、基軸通貨であるドルが不換紙幣であることが最大の問題であるということは確かだと思います。

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