「のりたまと煙突」 星野博美 (文春文庫)2009年08月02日

この人は写真家兼エッセイストで、旅に出ることが多くて家を空けがちなのに猫を飼っている。日本にいる間はひとりでファミリーレストランやコーヒーショップに行ってコーヒーを飲みながら周囲を観察している。そういう日常生活のことを書いたエッセイなのだが、記憶と想像を自在に駆使していて世界に広がりがある。面白い。

近所の公園を散歩していて、何かがおかしいと感じる。ここにはかつて何があったんだろうと思いつつ歩いているうちに、手掛かりを得る。別の遊歩道についても何かを感じて図書館で調べると、公園の歴史と関係があることがわかる。更に調べると彼女の母校である大学の創立とも話が繋がって、在学中にもやもやしていた疑問が一気に焦点を結ぶ。そこには太平洋戦争とアメリカが関わっている。

まるで村上春樹の「羊をめぐる冒険」みたいな謎解き話だなあと思ったのだが、そういえば「羊をめぐる冒険」には彼女の母校であるICUが登場するのだった。星野博美が戦後のアメリカによる日本のキリスト教化について言及しているのを読んで、夏目漱石が「西洋人は耶蘇化でないものは開化ではないと考えている」と言っていたことを思い出した。

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