「Aja」 スティーリー・ダン2012年08月17日

スティーリー・ダンの作品中、最も高く評価されているのアルバム。コード進行とか演奏技術とかのテクニカルな面で、ポップス界の最高峰だろう。ドラムはいろいろな人が叩いているが、ベースは一曲を除きチャック・レイニー。レイニーさんのベースは音の強弱の付け方が素晴らしい。特に「ペグ」のベースのグルーブが気持ち良い。

表題曲「Aja」では、サックスの大御所ウェイン・ショーターのテンションの低いソロと、ドラムの神様スティーブ・ガッド入魂のソロの対照的な絡み合いなんかも聴ける。他にもラリー・カールトン、ジョー・サンプルなどジャズ、フュージョン界の大物が多数参加。その大物たちが地味な伴奏に徹しているのが何とも素敵で、聴けば聴くほどじわじわと質の高さが判ってくる名盤だ。

「Pretzel Logic」 スティーリー・ダン2012年08月15日

スティーリー・ダンの3作目。だんだんと、スティーリー・ダンらしいタイトなサウンドになりつつあるが、曲は意外にアッサリしていて、軽快かつシンプルにまとまっている。

このアルバムまでバンドの体裁を保っていて、その後はベッカーとフェイゲンの2人がスタジオ・ミュージシャンを集めてアルバムを作るようになる。そう思って聴いてみれば、バンドとしては一応まとまってきたものの、何か物足りない感じはする。後付けの感想かもしれないけど。

「Alive In America」 スティーリー・ダン2012年08月03日

スティーリー・ダンのライブ盤。スタジオで緻密に練り上げたアルバムを作るスティーリー・ダンがどういうライブをするのかと興味津々で聴いたら、スタジオ盤のアレンジをほぼ再現していて感心した。さすがです。スタジオ録音のキッチリした感じもある程度保ちながら、ライブ演奏らしい活き活きとした雰囲気があって、非常に良い。

パワフルでタイトなドラムはデニス・チェンバース、ノリのいいベースはトム・バーニーという人。トム・バーニーって誰?と思って調べたら、マイルズ・デイヴィスのアルバムに参加したこともある人らしい。

「Best of KOKUA Festival」 ジャック・ジョンソン2012年07月20日

ジャック・ジョンソンが環境教育をサポートする活動の一環として行なっているフェスティバルのベスト盤。ウィリー・ネルソンとかボブ・マーリーの息子たちとかジェイク・シマブクロとかいろんな人が参加している。

ベン・ハーパーはジャック・ジョンソンのデモテープをプロデューサーに聞かせてデビューさせたという関係である。ジャクソン・ブラウンが「Take It Easy」を歌っているが、この曲はジャクソン・ブラウンがイーグルスに提供したのだそうだ。

多彩な共演者と比べてもジャック・ジョンソンは歌が上手い。アコースティックギター主体の静かな演奏で、レイドバックしていて気持ち良い。地味だけど名盤。暑い日に聴くと少し涼しくなるような気がする。

「Live In Tokyo 2012」 奥田民生2012年06月05日

僕以外の家族はこのツアーの大阪公演に行ったのだが、僕はパスした。前回の岸和田公演の音量が大きすぎて気分が悪くなったし、40過ぎから始まった耳鳴りが悪化しそうな気がするからだ。コンサートに行く代わりにライブ盤を聴いてみる。

奥田民生のバンドはソロデビューから10年ほどDr.StrangeLove+斎藤有太だったが、数年前から小原礼、湊雅史、斎藤有太に代わった。正直なところ、このバンドがあまり好きではない。前のバンドの方が良かった。前のバンドはビートルズ志向で脱力感とユーモア感覚があり、音楽性の幅も広かったが、今のバンドはツェッペリン志向で力んだ感じがあって、どの曲もハードロックっぽくて楽しそうではない。ライブを聴くと、そういう傾向がスタジオ録音よりもハッキリと表れている。

タミオの活動全体を見れば、アコギ弾き語りの「ひとり股旅」とか、ステージ上で一人多重録音をやってみせるレコーディングライブとか、誰よりも幅広いので、バンドでは狭く絞り込んだ音楽性を追求しているのかもしれない。

「GIRLS' GENERATION」 少女時代2012年05月11日

うちの奥さんと娘がYouTubeなんかで聴いていた韓流アイドルには無関心だったのだが、菊地成孔による少女時代の楽曲分析がとても面白かったので、自分でもCDを買って聴いてみた。これは良くできている、洋楽クオリティ。一聴してキャッチーで、よく聴くと捻りも効いている。

この人たちは結構歌がうまくて、リズム感も良い。バックの打込みは意外に音が少ないのだが、サウンドが薄っぺらく感じないのはコーラスで頑張っているからだ。コーラスがうまくいっているのは、ボーカルをクールにコントロールできる証拠である。

歌手というのは大きく二通りに分かれる。歌とバックの演奏を一体で捉える人と、歌と伴奏を分けてしまう人である。少女時代は前者で、歌と打込み演奏が良くハモっている。歌を曲の一部としてバックの演奏と調和させるには、強いビブラートをかけたりコブシを回したり派手に強弱を付けたりせず、クールに歌うことが肝要だ。

一方、ボーカリストとしての自己主張が強い人は、そういうことをどんどんやって、伴奏から浮き上がろうとするわけである。歌が上手くないアイドルなんかの場合は、ヘタなせいで伴奏と調和せず、それでかえって個性が出たりする。少女時代の皆さんはそのどちらでもなく、ストイックに音楽性を追求する方向にプロデュースされているようだ。

「Very Best of Charlie Parker」 チャーリー・パーカー2012年05月06日

最近、個人的にジャズブーム継続中なので、モダンジャズの開祖であるチャーリー・パーカーも聴いておこうと思ってベスト盤を探してみた。5枚組とか13枚組とかいろいろあるが、そんなにマニアックに聴きたいわけではない。

曲名を見て、菊地成孔がラジオのオープニングに使っている「Bluebird」、矢野沙織がコピーしていた「Donna Lee」、村上春樹の「ピンボール」に出てくる「Just Friends」と短編のタイトルに引いている「On A Slow Boat To China」、チャカ・カーンが歌っていた「A Night In Tunisia」、ビバップの代表的名曲と言われている「Comfirmation」も入っているこの2枚組を買った。開けて見ると、菊地成孔と矢野沙織がライナーノーツを書いていた。

'40年代の録音だから音質はローファイ、4ビートのリズムはシンプルで、1曲3分前後で終わる気軽さもあって、ぼおっと聴いているとほのぼのした感じだが、良く聴くと難しそうなフレーズを楽々と表情豊かに演奏していて凄い。これは末永く楽しめそうだ。

「'FOUR' & MORE」 マイルズ・ディヴィス2012年04月19日

僕は20年以上前からマイルズの「My Funny Valentine」というライブ盤を愛聴しているのだが、なぜか同じライブの別の曲が入ったこのアルバムは今まで聴いていなかった。「My Funny Valentine」はバラードばかりなので、えらく静かなコンサートだなあと思っていたのだが、この「'FOUR' & MORE」はアップテンポで印象がぜんぜん違う。こっちもカッコイイ。というか、両方続けて聴くとコンサートの全体像が分かるわけだな。両方入った「The Complete Concert '64」というCDもちゃんとある。

「Radio Music Society」 エスペランサ・スポルディング2012年04月18日

グラミー新人賞を取って超メジャーになったエスペランサの新譜。いつもながらお洒落で格好良くて高品質な音楽。声が良くて歌が上手く、演奏もうまく、コード進行が複雑。とにかく天才。

1作目「Junjo」がピアノトリオのジャズ、2作目「Esperanza」はポップ、3作目「Chamber Music Society」は室内楽とジャズの融合と来て、今回はポップ路線に戻ったが2作目のラテンっぽい感じが無くなった。「Esperanza」はスタジオライブのようなオフマイクで少し残響のある音だったが、今回はオンマイクでデッドな音。なんか'70年代ソウル風に聴こえる。

この人のキャラクターは最初「歌うジャズベーシスト」だったが、「Chamber Music Society」で「作曲家・編曲家」を前面に持ってきたところ、グラミーで有名になり、その勢いで完全に「ソウル歌手」として売り出しているようだ。オマケのDVDにアルバム全曲のPVが入っていたので演奏シーンを期待したのだが、連作短編風のドラマ仕立てでガッカリした。

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「La memoire de mon bandwagon」 コトリンゴ2012年04月12日

コトリンゴの新作5曲入りミニアルバム。コトリンゴの曲はパターンが豊富だが、大きく分けると、打ち込みエレクトロ・ポップと、ピアノ弾き語りと、バンドサウンドがある。僕はバンドサウンドの曲が好きなので、バンドサウンドだけのアルバムを作って欲しいなあと思っていた。このアルバムはベースとドラムを入れたピアノトリオのコトリンゴバンドで作っている。プロモーションの写真なんかも揃いの衣装を着た3人で写っていて、しばらくコトリンゴバンドとして固定メンバーでやりそうな雰囲気だ。

聴いてみると、バンドとはいうものの、今までどおりいろいろな曲調がある。もっとジャズ・フュージョン志向でガンガンやるのかと思ったら、そういうものではなかった。いつもながらコトリンゴのピアノは表現力が豊かでアレンジもイメージが多彩だ。ファンタジックな短編映画に付けた音楽のようである。

それぞれの曲は良いのだが、僕の音楽耳はフルアルバムのサイズに適応し過ぎているので、このミニアルバムという形式は短くて困る。前菜だけで終わりみたいで物足りない。同じメンバーで夏にフルアルバムも出るらしいので、大いに期待します。

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