「Jarrod Lawson」 ジャロッド・ローソン2015年01月19日

久しぶりにカッコイイ音楽を聴いた。白人だけどソウルっぽいヴォーカルで、裏声を多用した一人多重コーラスも凝っている。バックは打込みじゃなくて生楽器を演奏していて、これがジャズ・フュージョン系で巧いしノリも良い。 スティービー・ワンダーに憧れていたらしいのだけど、たしかにちょっと歌い方が似ているところはある。 歌も巧いしサウンドもよくできていて才能を感じさせるのだけど、何かが足りない。メロディーが弱いんじゃないかと思う。アルバム12曲70分も入っているが、残念ながら、どの曲もメイン・ヴォーカルより伴奏が印象に残り、メロディーが心に残る曲がひとつも無い。 この人はアレンジャー気質というか、まず完成されたサウンドのイメージありきで曲を作っているんじゃないだろうか。メロディーに肉付けしてできた曲だとは思えない。 サウンドは本当にカッコイイので、BGMとして聴くにはサイコー。メロディーが訴えてこない分、邪魔にならない。

「'80年代ポップス再評価」2014年04月28日

「ポピュラー音楽の聴き方」シリーズ、第二弾が出ました。80年代のアルバム下記7枚を詳細に分析して価値を再発見した研究報告です。

「A Long Vacation」 大滝詠一
「Private Eyes」 Hall & Oates
「For You」 山下達郎
「TOTO IV」 TOTO
「Pearl Pierce」 松任谷由実
「Thriller」 Michael Jackson
「Vitamin E・P・O」 EPO

アマゾンにて販売中。

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「The Great Crossover Potential」 シュガーキューブス2013年04月17日

ビョークがソロデビュー前にやっていたロックバンド、シュガーキューブスのベスト盤。メランコリックな雰囲気のサウンドがちょっとポリスに似ているような気がするが、曲のインパクトは弱い。インディーズとしては良く頑張っているという感じだが、サウンドもリズムもややメリハリに欠ける。ビョークのボーカルだけは文句なしに良いのだけど。

ソロになってからのビョークは、例の低音の効いた打込みの他にもジャズやクラシカルなアレンジの曲もやるが、こういうロックのバンドサウンドだけは全くやっていない。とにかくギターの音を使わないのだ。ロックはインディーズ時代に充分やったということだろうか。

そう思って、ソロの「POST」なんかと聴き比べてみると、ビョークの声の活かし具合が全然違う。ギターの音は自分の声と音域や音質が近くてカブるから、もうロックはやらない、ということなんではなかろうか。

「ポピュラー音楽の聴き方」2013年04月16日

ポピュラー音楽愛好歴40年にして、ようやく聴き方のコツをつかみました。判ってしまえばカンタンなことだったのです。聴く時の意識を少し変えるだけで、聴き飽きたはずの音楽も新鮮に聴こえるからアラ不思議、そのうえお得。その極意をはじめ、音楽とは何か、ポピュラー音楽の歴史とジャンルなどについての僕の考えを電子書籍にまとめてみました。お薦めCDの紹介もあります。

アマゾンで販売したところ、結構高評価のレビューもいただいております。

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「ツバメ・ノヴェレッテ」 コトリンゴ2013年01月16日

ツバメはもちろん燕のことだけど、ノヴェレッテは何かというと、短編小説のことらしい。英語のnovelの仲間。さらに調べてみると、短編小説みたいな短い曲を表す音楽用語でもあるのだった。プーランクの「3つのノヴェレッテ」をパスカル・ロジェが弾いているCDが手元にあったので、聴いてみると、このツバメ・ノヴェレッテに通じる雰囲気がある。

紙製のCDジャケットが歌詞カード兼絵本になっていて、曲が絵本のサウンドトラックという趣向。ピアノ、ベース、ドラムのコトリンゴ・トリオが基本だが、いつものようにピアノ弾き語りも、打込みもあって多彩だ。

打込みのサンプリング音は生楽器がほとんどで、いつもと違い、あまりエレクトロじゃなくてクラシカル。オーケストラのように聴こえるサウンドも全部打込みのようだから、スコアを自分で書いて、自分でプログラミングしているのだろう。すごい職人芸を持ったアーチストだ。

このアルバムをスタジオで録音している様子を12時間×3日間、ネットで生中継していた。僕は仕事をしながらずーっと観ていたので、そのときにやっていた数曲を聴くと、ツバメが飛んでいるイメージじゃなくて、狭いスタジオで録音している様子が頭に浮かぶ。

 → コトリンゴに関する記事

「Baroque」 大西順子2012年11月04日

菊地成孔のラジオ番組「粋な夜電波」のポッドキャスト(2012年10月14日分)を聴いていたら、引退を表明した大西順子さんがゲストで出ていた。自宅にあるピアノやらフェンダーローズやらも使ってくれる人に差し上げますと言って、応募方法も告知していた。ご本人談によると、自分が目指す演奏をするために必要な身体をこれ以上キープできないから引退するというような、一流アスリート的引退理由であった。

昔「Junko Ohnishi Live At The Village Vanguard」(1994)を聴いて、すごいパワフルな演奏だなと思った記憶があるが、あれからもう20年近く経つのか。興味が湧いたので最後のアルバム「Baroque」を聴いてみると、やっぱりとてもパワフル。居酒屋でよくかかっているようなスムースジャズではなく、すごい迫力でガンガン迫ってくるサウンド。これは確かにいつまでも続けられないのかもしれない。この先、身体的に衰えたとしても、それなにの表現方法はあると思うのだけど、そういうのは好きじゃないらしい。

村上春樹と小澤征爾も彼女の引退を惜しんでいた。

「Sunken Condos」 ドナルド・フェイゲン2012年10月26日

最近ずっとスティーリー・ダンにハマっていて、アルバムをコンプリートしたところで、ドナルド・フェイゲンの新譜が出た。嬉しい。

期待を裏切らず、過去のドナルド・フェイゲンやスティーリー・ダンの作品の雰囲気とクオリティを完全に保っている。新鮮な食材をキリッとしたダシで料理したような味わい。長年同じことをやっていても、マンネリという感じにならない。打込みではなく生の楽器演奏のサウンドとグルーブを聴かせてくれるミュージシャンが絶滅寸前なので、この先も末永くがんばっていただきたいものです。

シングル曲「I'm not the same without you」はスティーリー・ダンの「Aja」に入っている名曲「Peg」に似ている。ベースがカッコイイので練習してみよう。

「Can't Buy A Thrill」 スティーリー・ダン2012年08月30日

スティーリー・ダンのファーストアルバム。なんかユルイ雰囲気のロック。スティーリー・ダンと知らずに試聴機で初めて聴いたとしたら、欲しくならなかったと思う。生ピアノが活躍する曲は、ストレンジャーでブレイクする前のビリー・ジョエルに感じが似ている。

ドナルド・フェイゲン以外にもいろんな人がボーカルをとっているし、得意のややこしいコード進行もまだ控えめで、スティーリー・ダンらしくない。というか、こういう普通のロックから試行錯誤しながら音楽性を突き詰めていった末に「エイジャ」みたいなスティーリー・ダンの音に到達したのだなとわかる。

「countdown to ecstasy」 スティーリー・ダン2012年08月20日

1曲目「菩薩」はブルース進行の軽快なロケンロールかと思いきや、そこはスティーリー・ダンらしくヒネリの効いた展開で面白い。その他の曲も軽快というか緩い雰囲気で「エイジャ」や「ガウチョ」のビシビシにタイトな感じとは違う。哀愁漂うスティールギターが鳴ってカントリーっぽくなったり、簡単なコードパターンを延々と繰り返してファンクっぽくなったりするが、全体としてスティーリー・ダンであるというところが良い。

「The Royal Scam」 スティーリー・ダン2012年08月17日

コード進行の凝り方とかアレンジの洗練とかバックのミュージシャンの演奏の上手さといったテクニカルな面のカッコ良さで、ポピュラー音楽界最高峰に位置するのがスティーリー・ダンである。スティーリー・ダンの名作「エイジャ」と「ガウチョ」は昔から愛聴してきたが、他のはどうだろうと思って聴いてみる。

「エイジャ」「ガウチョ」と同様にうまくてカッコイイが、雰囲気がややソウルというかファンクっぽくて暖かみがある。ベースがチャック・レイニー、ドラムがバーナード・パーディというリズム隊が素晴らしい。スティーリー・ダンらしいクールさでは「エイジャ」「ガウチョ」の方が優るが、このアルバムも非常に良い。

2曲目のイントロはどこかで聴いたような気がして記憶を辿ると、ユーミンの「キャサリン」だった。このアルバムの発表が'76年で、「キャサリン」の入った「流線型’80」は'78年。これは影響を受けているなと思いつつ聴いていると、最後の曲のイントロがまた 「流線型’80」 に入っている「かんらん車」そっくり。他にも細かいところでユーミンの曲に似ているところがいろいろある。松任谷正隆アレンジの元ネタの宝庫なのだった。