「硝子戸の中」 夏目漱石 (岩波文庫) ― 2009年09月02日
漱石のエッセイ。小説とは全然違うサラッとした文章で読みやすい。病気療養中に書いているせいか、しんみりした雰囲気が漂う。さすがは漱石先生、身の回りのできごとや過去の回想を書くだけで短編小説みたいになっている。
エッセイに出てくる漱石自身の行動が面白い。坊っちゃんのように一本気で馬鹿正直なところがあったようだ。手紙を送ってきたり家に訪ねてきたりする読者がいると、厚かましい要求におっちょこちょいな対応をしたり、生死に係わる人生相談に深く誠実に応対したりする。先生自身がすごく魅力的なキャラクターである。
「サーフライド」 アート・ペッパー ― 2009年09月04日
ジャケットのイメージに違わず、曲は明るくポップで楽しい。モノラルのマイク一本で録っているらしく、ピアノがちょっと遠く聞こえる。演奏が良いのでそういうところも味わい深く感じる。
タイトル曲の「Surf Ride」は別のアルバムで聴いたことがあり、すごく好きなので一番に聴いてみると、メロディが違う。よーく聴いてみるとコード進行は似ているような気もする。ジャズというのは同じ曲を全然違う曲のように演奏するのもアリなんだろうけど、ここまで違うかな。と思いつつ1曲目から聴いていくと、何とSurf Rideの前の曲が僕の聴いたことのあるSurf Rideであった。CDジャケットとiTunesデータベースの曲名表示が間違っていたのである。iTunes Storeで1曲ずつ試聴しながら調べてみると、表示の曲順とCDに入っている曲順は全然違うことが判った。しかもどちらもレコード発売当時の曲順とも違うのである。国内盤なので、メーカーに苦情メールを送っておいた。
(2014.1.5 追記) 今ではこの「サーフライド」も含む7枚のアルバムが入った4枚組CDセットが1000円程度で買える。曲順等がどうなっているかは不明。
ペットボトル緑茶対決 ― 2009年09月06日
芋焼酎の緑茶割りを飲むためにペットボトルの緑茶を買うようになった。いろいろ試してみた結果、一番美味しかったのはコカコーラ社の「綾鷹」。抹茶が入っていて、断トツで美味い。しかし500mlのボトルしかない。いやよく見ると425mlだった。500が400でも良いのだが、2リットルが無いのは残念。かなり割高だ。
次に美味いのはアサヒの「いぶき」。こんなブランドは知らなかったが、香りが良くて気に入った。
サントリー「伊右衛門」は味が薄い。巷でもそういう評判があるのか「濃いめ伊右衛門」というのが出た。こっちの方が良い。
伊藤園「おーいお茶 緑茶」。焙じ茶のような香ばしさがあって、お握りには合うと思うが、焼酎向きではない。
キリン「生茶」。僕は昔の「生茶」の方が好きだった。前はもっと渋くて、そこが良かったのだが、渋く無い方向にモデルチェンジして頼りない味になってしまった。「伊右衛門」を意識したんじゃないかと思う。焼酎を割るのにももうひとつである。キリンはビールもサントリーのオールモルト化に追随しているし、なんかジリ貧傾向なのではないか。それでサントリーと統合しようと考えたのか。
そういうわけで、「いぶき」を常備して飲むことにした。ディスカウント店で2リットル165円~180円くらいで買える。でも今日スーパーで425ml98円の「綾鷹」を買ってきて飲んだらやっぱり全然違う美味さだった。やっぱりこっちかなあと悩む。
自民党 ― 2009年09月07日
世論調査では自民党の復活に期待する人は結構多いようだ。自民党は復活できるのだろうか。まず誰をリーダーにするかだが、幹部クラスの人材が払底していることは間違いない。人材がいたら安倍総裁の次ぐらいには出てきていたはずだ。
では若手が出てくるのだろうか。若手が出てきてリーダーになれたら自民党復活の可能性もありそうな気がするが、そんなことになったら年功序列というか当選回数による秩序が崩壊してしまう。仮に若手が総裁になるとしても、陰で誰かが操る形じゃないと収まらない。それだと自民党が出直した感じにならない。幹部なのか若手なのかよくわからない石破氏が適任かもしれない。
ともかくリーダーが決まったとして、民主党に対抗する旗印は何にするか。民主党との違いを訴えようにも、「官僚主導」とか「土建の復権」では支持を得られそうにない。話がそっちに行かないように、外交や防衛を論点に何か保守的な雰囲気を抽象的に訴えるしかないのだろうか。それでも自民党の中で意見が分かれそうな気もする。
自民党が復活するとしたら、民主党がコケた場合だろう。来年の参院選までに民主党が成果を上げられない場合は、自民党は政権担当能力を訴えることができる。あとは小沢・西松問題と鳩山・献金問題が残っているが、民主党全体がコケるほどのことにはならないのではないか。一方、民主政権は過去半世紀の自民政権の疑惑だの密約だのを暴くことができるが、自民が民主政権を攻撃するとしたら、政権交代後の短い期間のネタしか無い。
自民党が何とか復活した場合、民主党が廃止した次官会議や特別会計や天下り特殊法人を復活させようとするのだろうか。それができないとしたら何をしようとするのだろうか。そのあたりも見えない。
「Tete-A-Tete」 アート・ペッパー ― 2009年09月10日
「The Way You Look Tonight」という曲は最近どこかで聴いたなと思ったら、「Surf Ride」にも入っていたのだった。ペッパーは'52年のデビュー作と'82年の遺作で同じ曲を演奏しているわけである。聴き比べているうちに、グレン・グールドを思い出した。グールドは'55年のデビュー作と'81年の遺作で同じ「ゴルトベルク変奏曲」を演奏している。
違うジャンルの音楽家である2人だが、同時期に活動して、同じ'82年にどちらも脳溢血で亡くなった。同じようにデビュー作と遺作でスタンダード曲を演奏していて、デビュー作はモノラル録音で演奏は軽快、遺作はデジタル録音で落ち着いた演奏。曲は全然違うが、デビュー作と遺作の対比はすごく似ていて面白い。音楽というのは時代を反映しているのだなあ。そして、深く極めた人は同じようなところに到達するのだなあ。こういうのをシンクロニシティというのだろう。
「Magical Mystery Tour」 The Beatles ― 2009年09月13日
リマスター盤はどんなものだろうか。僕はビートルズはレコードやCDで大体持っているが、このアルバムは持っていなかったので買ってみた。音質はそんなに良いとも思えない。ドラムが片チャンネルに寄っていたりして聴き難い。なるほど、これならモノラルの方が良いかもしれない。
昔FMラジオから録ったカセット・テープをさんざん聴いたので、新しい感想はあまり湧いてこないが、やっぱりポールは偉大な作曲家だなあと思う。「Penny Lane」は名曲だ。ところで、「I Am the Walrus」を聴きながらジョンの顔を思い浮かべようとしたら、田中マルクス闘莉王になってしまった。
イチロー ― 2009年09月15日
イチローはやっぱり凄いですね。イチローが記録を達成すると記者から「次の目標は」と訊かれて「今それを訊くの?」と答えるのも恒例になってきたが、イチローは来年以降ものすごく自由になるのではないだろうか。
9年連続200安打の先にある記録はピート・ローズの「年間200安打を生涯10回」と「通算4256安打」だが、そういうのは今までと違って「今年ダメだったら終わり」というプレッシャーが無い。だからこれからは今までより気楽に打てるようになる。その結果、年間最多安打記録を更新するかも知れないし、「今年はヒットが減っても良いからホームラン王を狙ってみる」ということもできる。
連続200安打はプレッシャーであるのと同時にモチベーションにもなっていたはずだ。イチローは「解放された」と言っていたが、それなら別のテーマが必要になる。とりあえずあと2回200安打をやるのか、他の目標も設定するのか。来年も楽しみだ。
電卓 HP35s ― 2009年09月17日
調べてみると、HPの電卓は一部で人気があるようだ。逆ポーランド方式とキーの感触とデザインがポイントらしい。なんか僕も欲しくなってきたので逆ポーランド方式の使えるHP-35sというのを買った。通販で9000円くらい。2ギガのSDカードが付いていたので、電卓にSDスロットがあるのかと思ったら、そうじゃなくて純粋なオマケなのだった。
逆ポーランド記法(RPN:Reverse Polish Notation)というのは数値の後に演算子を配置する方法である。普通は1+2=のように演算子「+」を数値の間に置くが、この電卓では 1 enter 2 + と演算子を後で入力する。さらに例えば、(1+2)×3=を計算する場合、1 enter 2 + 3 × と入力する。括弧を入力する必要が無い。これは頭の中で「1に2を足して3を掛ける」と考える順番通りなのである。
最初はなんのこっちゃと思ったが、説明書を読んで練習問題をやっているうちにだんだん具合が判って面白くなってきた。たしかに慣れると便利かもしれない。キーを押す感触もコリコリしていて良い。
「PLACE TO BE」 上原ひろみ ― 2009年09月18日
上原ひろみのピアノ・ソロ。ソロということで張り切って弾き過ぎではないか。弾きまくりが痛快な曲もあるが、全体を通して聴くと過剰な感じがする。イヤホンなんかでじっくり聴くとしんどくなってくる。バンドで他のプレイヤーとバランスを取りながら弾いているときの方が良い。
日本盤ボーナストラックとしてGreen Tea Farmという曲を矢野顕子が歌っているが、歌詞を付けたのなら自分で歌えばいいのにと思う。何で自分で歌わないのだろうか。この人は歌うための神経回路がピアノを弾く指に繋がっていて、自分の歌に納得がいかないのかもしれない。
「耳で考える」 養老孟司 久石譲 (角川oneテーマ21) ― 2009年09月23日
久石譲が、完成度の高い曲は楽譜をパッと見て判るといっているのが興味深い。音符の並び方が美しいのだそうだ。これは僕の専門である機械設計でも同じことがいえる。ややこしい図面でもパッと見ればその美しさで何となく完成度が判る。
耳や音楽の話とは別に、久石譲が村上春樹と宮崎駿の作品のシンクロニシティを指摘しているのが面白かった。具体的な共通性はあまり言わないが、例えば作家性の強い「海辺のカフカ」と「千と千尋の神隠し」は同時期に作られている。たしかにどちらも子どもが試練に会って魑魅魍魎が出てくるワケの判らない話なのに世界的に受けた。
僕は村上春樹と奥田民生がシンクロしていると思うのだが、村上春樹と宮崎駿の表現上の共通性はそれほどでもない。これは村上春樹と奥田民生が耳の人であるのに対して、宮崎駿は目の人だからではないだろうか。
→ 「虫眼とアニ眼」 養老孟司・宮崎駿
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