宇宙2009年08月01日

以前、僕の友人が「スペースシャトルが行っているところは、高々400キロ上空であって、宇宙というほどではない」と主張していた。彼は「月くらいまで行けば宇宙だ、アポロはすごかった」と言う。確かに38万キロ彼方の月まで行くことに比べれば、400キロは近い。なるほど。

宇宙ステーションはなぜ400キロ上空を飛んでいるのだろうか。もう少し低いと空気があるので空気抵抗でステーションが落ちてしまうし、もう少し高いと高エネルギー粒子が飛びかっていて危険、ということらしい。つまり400キロより遠くは危険な粒子が飛びかう真空の宇宙空間で、それより近くは空気に守られた安全な地上なわけである。400キロ上空は真空だから宇宙。

仮に400キロの高さのビルを建てたとしたら、最上階あたりを宇宙ステーションが秒速8キロくらいで通り過ぎる。ビルの屋上に立ってみれば無重力ではなく地上の9割程度の重力を感じるが、地上と違ってほぼ真空である。

国際宇宙ステーションに長期滞在した若田さんが、目薬を差したり、水と油を混ぜたり、縄跳びをしたり、いろいろ面白い実験をしていた。宇宙では無重力なのでこうなります、というわけだが、宇宙の特徴は無重力より真空ではなかろうか。

真空に近い状態は地上でも真空ポンプを使って作り出せるが、無重力はそうは行かない。飛行機の急降下で数十秒がせいぜいらしい。だから宇宙ステーションの売り物は無重力になるのだろう。

「のりたまと煙突」 星野博美 (文春文庫)2009年08月02日

この人は写真家兼エッセイストで、旅に出ることが多くて家を空けがちなのに猫を飼っている。日本にいる間はひとりでファミリーレストランやコーヒーショップに行ってコーヒーを飲みながら周囲を観察している。そういう日常生活のことを書いたエッセイなのだが、記憶と想像を自在に駆使していて世界に広がりがある。面白い。

近所の公園を散歩していて、何かがおかしいと感じる。ここにはかつて何があったんだろうと思いつつ歩いているうちに、手掛かりを得る。別の遊歩道についても何かを感じて図書館で調べると、公園の歴史と関係があることがわかる。更に調べると彼女の母校である大学の創立とも話が繋がって、在学中にもやもやしていた疑問が一気に焦点を結ぶ。そこには太平洋戦争とアメリカが関わっている。

まるで村上春樹の「羊をめぐる冒険」みたいな謎解き話だなあと思ったのだが、そういえば「羊をめぐる冒険」には彼女の母校であるICUが登場するのだった。星野博美が戦後のアメリカによる日本のキリスト教化について言及しているのを読んで、夏目漱石が「西洋人は耶蘇化でないものは開化ではないと考えている」と言っていたことを思い出した。

財源問題2009年08月03日

危機的状況に対処するための新しい政策を行おうとするときに、財源を問うのはナンセンスだ。その政策は危機的状況への対処なんだから優先度が高いのである。他のことは置いといて一番にやればよいだけである。限られた財源の範囲で優先度の高いことから実行していって、財源が尽きたら優先度が最も低い政策が実行されずに残ることになる。あとは、その政策を借金してでもやるべきかどうかという問題である。

とはいうものの、日本の国家財政の赤字は何とかしなくてはならない。政策の優先度とは別に、財政を立て直すための財源は必要である。そこで、まず税金の無駄遣いを見つけてストップしなくてはならないのだが、それをやろうとすると高級官僚の皆さんの退職後の収入に関わってくるので、少なからず抵抗があるだろう。

高級官僚の皆さんは若いうちは安い給料で寝ずに働いて大変なのであるから、この際、天下りを法制化する。ただし、天下り先は新設する特別天下り法人1ヶ所に絞る。そこに天下った人は何も仕事をしなくて良く、従来の特殊法人へ天下ったり渡ったりした場合と同じだけの報酬をもらえるのである。こうすれば、今と変わらない金銭的利益を得られるので、官僚の抵抗は起きない。一方、天下り用の特殊法人などに無理やり発注していた無駄な事業費が無くなるので、国の支出が大幅に削減される。

天下り官僚の報酬1億を生み出すために、10億から100億くらいは無駄な仕事を作っていたと思われる。したがって、特別天下り法人の設置により無駄な事業費の90~99%がカットできることになる。

記憶力の衰え2009年08月06日

40代後半になって記憶力の低下が著しい。新しいことを覚えるのも難しいが、それより昔覚えていたことを忘れつつあるのが問題である。同年代の友人たちもみんなその症状が出ている。会話をしていると、しょっちゅう誰かが「アレ何て言うんやったっけ?」とか言い出して話が停滞する。

大抵の場合は「うーん」と唸っているうちに誰かがちゃんと思い出すし、それでみんなが「そうそう、それそれ」と納得するので、脳のどこかにちゃんと記憶が残っていることは間違いない。でも、その記憶に素早くアクセスできなくなりつつあるのだ。

人や物の名前が出てこないのはまだ良いとして、もっと問題なのは「誰ソレが何を言った」とか「自分が何かをした」というエピソード記憶もやや曖昧になりつつあることだ。10年以上前の話なんかだと、自分がしたことと、自分が想像しただけのイメージと、人から聞いた話が混じり始めている。自分というものが変容しつつある。

今のところ、何かを間違えていることに自分で気が付いているわけだが、そのうちに何でも自分の都合の良いように記憶を作り変えてしまって平気になるのだろうか。

他方、自転車に乗るとか楽器を弾くとか、身体で覚える記憶は(体力的な問題は別にして)今のところ変化が無さそうである。光学機器の設計という僕の仕事は、どちらかというと身体で覚える方の能力を使うので、もうしばらくは大丈夫であるような気がする。

設計をしていると細かい問題点がいっぱい出てくるが、それが覚えられないのは昔からである。だから若い頃からメモを取りまくっている。何でもメモを取り、取ったメモをしょっちゅう読み返す習慣は失わないようにしたい。

テレビ会議2009年08月07日

この前、新型インフルエンザの騒ぎで外出しにくくなったことがあった。何が起きるか判らない時代なので、非常事態に備えて、仕事仲間の定例ミーティングを一度テレビ会議でやってみようということになった。まず各自Webカメラを買う。ロジクールの200万画素のヤツにした。パソコンにスカイプのソフトをダウンロードする。会社に2人と自宅2人の3箇所4台のパソコンを繋ぐのが今日の目標である。

最初は音が出なかったり映像が出なかったりしたが、設定をいじっているうちに、まず2人でテレビ電話の通話ができた。しかし、3人目が加わると映像が消えて、音声だけの電話会議になってしまう。あれこれ調べてみたが、スカイプでは2人までしかテレビ電話はできないことが判った。しかたがないので声だけでミーティングをやった。

ウィンドウズのおまけに付いている「NetMeeting」というソフトを試してみる。各自のIPアドレスを調べて入力してみるが、うまくいかない。

更に探すとSOBA CITYというテレビ会議システムを発見。ソフトをダウンロードして、スカイプを繋いだままで、みんなで相談しながらいろいろ設定すると、4人の映像が並んだ。音はスカイプの方が良い。

お絵かきソフトの共有は面白い。ブラウザの共有も便利。我々の仕事では図面を一緒に見ることができると非常にありがたいのだが、デスクトップの共有はあまりうまくいかなかった。残念。でもまあかなり便利。今後ウェブ会議はSOBA CITYでやろうということになった。

「モダン・アート」 アート・ペッパー2009年08月08日

'90年代の初め頃にジャズのレコードがCD化されたのがきっかけで、ジャズを聴き始めた。スイングジャーナルを読んでタワーレコードに通い、いわゆる名盤を100枚くらい買った。3年くらいで僕のジャズ・ブームは終了したのだが、その中で最も気に入った3枚のアルバムのうちの1枚がこれ。

最近なぜか個人的にジャズ・ブームが再燃して、そういえばアート・ペッパーが良かったなと思い出して何年かぶりに聴いてみると、昔聴いたときよりもさらに気に入った。他のアルバムも聴き直して、持っていないアルバムを買い足すのが楽しみになってきた。

この人のアルト・サックスは音色が良い。サックス本体の金属管は余り鳴らさず、リードが鳴っている感じがする柔らかい音なので、速いフレーズを吹いてもうるさくない。サックスのリードは竹でできているのだと思っていたが、今調べてみたら葦だった。和名「暖竹」だから竹に近いのかもしれない。

このアルバムを聴いていると、感じの良いジャズ・バーにいるような気がしてくる。木製のカウンターと白熱灯の照明が思い浮かんで気分が和む。僕がそういうところにたまに行ったのは'80年代のことで、まだジャズは全然知らず、誰の曲が掛かっているのか判っていなかったが、今にして思えばこんな感じだった。BGMとしても良いし、真剣に聴いても飽きない。

録音は'56~'57年。'60年代のロックも'80年代のポップも今聴くと古いが、ジャズは古くならない。生楽器の音が良いからだろう。では、なぜジャズは廃れてしまったたのだろうか。音の雰囲気の可能性が開拓し尽くされたからだと思う。今、誰かがこういう雰囲気で演奏したとしても、古臭く感じるはずだ。ということは、純粋に音を聴いているのではなく、いつ演奏されたのかを意識したうえで聴いているわけだ。

「十二人の怒れる男」2009年08月09日

陪審員制度を題材とする'57年のアメリカ映画。裁判員制度の開始に触発されて、うちの奥さんが某DVD宅配レンタル業者の無料お試しキャンペーンで借りた。

今年一番の暑さだという日に、裁判が終わった後、12人の陪審員が冷房も無い会議室に缶詰にされる。殺人事件の有罪無罪を決めるのだが、全員が一致するまで延々と議論しなくてはならない。'50年代のアメリカにはクールビズという概念はなく、暑いのにネクタイもはずさない。ポロシャツにネクタイの男もいる。シャツに汗がにじんでくる。もちろん嫌煙権という言葉もなく、タバコは吸い放題。地獄みたいな部屋である。

12人全員が白人男性であるのは何か理由があるのだろうか。それはともかく、怒鳴り合いの喧嘩みたいになっても、最終的には理性的に判断できるアメリカの一般市民は偉いもんだ、これぞ民主主義、というような話。

議論をしていくうちに形勢が変わっていく過程が面白いし、各自の生い立ちとか家庭の事情とか偏見が露になっていく構成もなかなか良くできていて、なるほど名作だと思う。でもよく考えると、陪審員がこんなにうまく謎解きをすることは無いだろうなと思う。

ところで裁判員制度については、僕は反対である。裁判に一般市民の感覚が必要というなら、法曹関係者が一般市民の感覚を身に付けるように努力すれば良い。それと、最高裁判事の国民審査をやめて、現職プラス5名くらいの候補者の中から選挙するようにしてはどうか。

新聞工場2009年08月11日

甲子園球場の南2キロの海上というか埋立地にある朝日新聞阪神工場に見学に行った。1時半に工場の入り口に着くとまず案内係のおねえさんが記念撮影をしてくれる。それから、とても眺めの良い講義室で新聞トリビアを聞いて、新聞社のお仕事紹介ビデオを見る。その後、見学コースを案内してくれる。

新聞工場なんて輪転機が回ってるだけだから、そんなに面白くもないだろうと思っていたが、輪転機は想像よりはるかに大きくて興味を惹かれる。3階建てになっていて、建売住宅2軒分くらいはある。数本の巨大なトイレットペーパーのようなロールから高速で繰り出される紙に全ページの両面を一気に印刷している。それをどうやって合体するのかが判らないのだが、機械から出てきたときには一部ずつ折り畳まれている。

ロール紙の交換を機械を止めずにやる仕組みもすごい。コピー機でA4一枚印刷するのだって時々紙が詰まったりするのに、この輪転機はそういうことが起きないのだろうか。この速さで紙が詰まったら大変なことになりそうだ。

見学が終わる頃に夕刊の印刷が終わって静かになる。新聞工場というのは昼夜2回、2時間ずつだけフル稼働するわけである。最後に、刷り上ったばかりの夕刊と特別版をくれる。特別版はさっき撮った記念写真が載っていて、我々が見学に来たことが記事になっている記念品である。

我が家では今のところ紙の新聞を取っているが、数年前から紙の無駄じゃないかと思うようになった。記事は半日前にネットやテレビで知った内容だし、広告スペースが多いし、折込チラシも要らない。朝食の友として習慣的に読んでいるだけのような気がする。見学はいろいろ面白かったのだが、ものすごい勢いで紙を消費する現場を見たので、無駄をよりリアルに感じてしまった。

オリコン訴訟2009年08月12日

烏賀陽(うがや)弘道くんは「Jポップとは何か―巨大化する音楽産業 (岩波新書)」などの著書があるフリー・ジャーナリストである。彼は雑誌記事へのコメントに関連して、音楽チャートで有名なオリコンから恫喝的訴訟を起こされていた。地裁では負けたが、高裁では流れが変わって、オリコン側の「請求放棄」による烏賀陽側実質勝訴という結果に終わった。大企業が個人を訴えた末に逆転負けする過程は興味深い(→「うがやジャーナル」)。3年近く訴訟を抱えていたら生活は破壊されるし、ストレスも大変なものだったと思うが、勝つことができて何よりだ。

ボンゴレ・ロッソ2009年08月13日

昔、初めて入るイタリアン・レストランでは必ずボンゴレ・ビアンコを食べるようにしていた。安くて旨いからである。それで分かったのは、店によってニンニクの具合が全然違うということ。切り方はみじん切りだったり、スライスだったり、半分に切ってあったりする。火のとおり方も、白くて生っぽい場合からキツネ色でカリカリまで様々である。要するに好きにやれば良いのだ。

昨日作ったボンゴレは我ながら非常に旨かった。作り方は以下のとおり簡単。(2人前)

1、熱する前のフライパンにオリーブ・オイル大匙3くらい、ニンニク1個のみじん切り、玉ねぎ半分のみじん切りを入れる。玉ねぎは無くても可。同時にパスタをゆで始める。

2、1を中火で炒める。ニンニクはキツネ色にまでしない。黄色程度。

3、アサリ1パック、酒(白ワイン尚可)50ccを投入し、蓋をして強火で貝が開くまで炒める。

4、トマト1/2缶を投入、塩ひとつまみ、パセリかバジルのみじん切り適宜を振りかけて数分煮込んで、茹で上がったパスタをからめて完成。

3まででやめるとボンゴレ・ビアンコ、4でボンゴレ・ロッソですね。僕はロッソの方が断然旨いと思います。