2008年12月30日

今年は金融危機で大変なことになった。僕は10年前からこういう事態を予測していたし、今年6月には「近いうちにお金システムが激変するのではないか」と書いた。だいたい僕の心配したとおりになっている。今までは僕の話は一般常識的認識とズレていたが、ついに世間と僕の距離が近付いてきた感じがする。

小脳論によると、お金というのは「他人がやってもらいたがっていること」をやると貰える「自分がやってもらいたいことを他人にやってもらえる」券である。

他人がやってもらいたがっていることをやってお金が貯まるのは良いが、そのお金をどこかに投資して増やすというのはちょっとおかしい。お金が殖えたら、自分が他人にやった以上のことを他人にやらせることができてしまう。投資したお金が殖えることにはそういうやましいところがあるのだ。だから経済成長を目指すと問題が起きる。

お金を介する行為は「他人がやってもらいたがっていることをやる」か「自分がやってもらいたいことを他人にやってもらう」のどちらかなので、経済活動の範囲には「自分のやりたいことを自分でやる」が含まれない。ということは、経済成長とは「自分のやりたいことを自分でやる」が社会から減っていくことなのである。やっぱり経済成長というコンセプトは何かがおかしい。

来年以降、経済はマイナス成長になりそうだが、それは経済成長とともに社会から消えていった「自分のやりたいことをやる」が戻ってくるということである。しばらく大変な状況が続くだろうが、我々は何とか生き延びて自分のやりたいことを(お金をかけずに)やるしかない。もうそういう方向性はハッキリしたと思う。

金融危機2008年10月14日

ここ数十年の世界経済は、アメリカ人が世界中からお金を借りて使いまくることで成り立ってきた。そのアメリカ人がついに「お金を返せない」と言い出したので世界中がひっくり返っているわけである。

こういうことになるのは前から分かっていたのだ。僕は10年近く前にこんなことを書いた。何かピンボケな部分もあるが、とにかくアメリカのバブル崩壊は必然だと言っている。でも実際にそうなるのには10年もかかった。

「貿易赤字のアメリカが借金をどうやって返すのか」という反語的疑問の答えは今になって分かった。返さないのである。返さずに更に借金をし続けて、最後はバブル崩壊によってチャラにする。これから世界中で行われる「不良債権処理」というのは、突き詰めるとアメリカの借金を棒引きにする作業だろう。

だとするとこれから先、元の世界経済のあり方には戻れないことになる。元に戻るとは「また世界中がアメリカにお金を貸す」ということだが、アメリカは多重債務で自己破産した人みたいなものだから、当分はお金を借りられない。

日本はアメリカに工業製品を売ることができなくなるから、当面は大不況に陥ることは間違いない。大恐慌かもしれない。銀行が潰れて預金が引き出せなくなったりするんだろうか。物流も滞って食料が手に入り難くなったりしないか。僕は悲観的な人間なのでいろいろ心配してしまうが、どういう風に備えたらいいのかがイマイチよく分からない。地震や新型インフルエンザへの備えも兼ねて、食料のストックは増やした方がいいような気がする。

ともかく「いかにお金を使わずに楽しく生き延びられるか」という方向に進むしか無いと思う。そうすると生活がエコロジカルになるという利点もある。ついに観念世界のエコノミーと実体世界のエコロジーが一致するときが来たのかも知れない。

福田首相退陣2008年09月03日

福田首相は公明党にいじめられたので辞めるらしい。いじめられるというか、公明党の言うとおりにしなくてはならなくなったわけである。では公明党の発言力が強くなったのはなぜかというと、この前の国会で「テロ特法」の再議決をしたからだろう。

自民党が衆参とも過半数を持っていた時代の公明党は、「選挙の時に協力する代わりに大臣ポストを一個もらう」という立場だった。自民党だけでも法案を通せるのだから、選挙が済んでしまえばあまり影響力を持てなかった。しかし与党が参議院の過半数を失って話が変わる。衆議院の三分の二の議席による再議決をするには公明党の議席数も必要になる。つまり自民党と公明党の取引のバランスが変わったのだ。

「テロ特法」成立をあきらめて再議決をしなければ、公明党の発言力はそんなに変わらなかったかもしれない。でも再議決という手を使ってしまったから、公明党は大臣ポスト以外の見返りをいろいろ要求できるようになった。福田首相は自分が行き詰ったのを前任者や民主党や公明党のせいにしているが、要するに自業自得である。全然自分を客観的に見ていない。

くいだおれ2008年07月09日

学生時代にバンド仲間の間で「くいだおれ」と呼ばれているドラマーがいた。妙に背筋を伸ばしたまま、腕だけでドラムを叩いているように見えるからだった。

前に勤めていた会社にも「くいだおれ」というあだ名の男がいた。ひょろっと背が高く黒縁眼鏡を掛けていて眉毛が太かったからである。

一回だけ「くいだおれ」に行ったことがある。就職したばかりだったから1985年のことで、同期入社の友人たちとミナミに繰出したものの、どこでご飯を食べたらよいかわからず「くいだおれ」しか思い付かなかったのだった。たしか、1階の食堂で何か洋食を食べたと思う。味は特に印象に残っていない。

その時にくいだおれ人形(その頃にはまだ太郎という名前は付いていなかった)を間近で観察した。くいだおれ人形が叩いているように見える太鼓はチャチな作り物だろういと思ったら意外にもヤマハのスネアドラムだった。僕もヤマハのドラムを使っていたので親近感が湧いた。ただし、実はくいだおれ人形はそのスネアを叩いていない。ドンと鳴るのは背中にしょったバスドラムだ。

道頓堀のあたりをぶらぶらしていて、人混みの奥でくいだおれ人形の鳴らす「チーン、ドン」という音が聞えてくると、何となく祝祭的な気分が醸し出される。くいだおれ人形がいなくなると寂しいという意見が多いようだが、たしかにあのレトロな音がなくなると道頓堀の雰囲気はかなり変わるような気がする。でもよく考えると、もう何年も道頓堀には行っていないし今後行くつもりもないのだった。

通り魔事件2008年06月12日

通り魔事件の被害者の人たちは本当に気の毒だ。秋葉原には行ったことはないが、別の場所で自分が通り魔に合う可能性だってあると思う。いったいこの事件をどう捉えればいいのだろう。

僕が気になるのは自動車のことである。犯人は最初トラックで人をはねて、次にナイフで人を刺した。ナイフの販売を規制しようという話が出ていて、僕も両刃のナイフなんか気軽に市販するべきではないと思うが、もう一つの凶器であるトラックを規制するべきであると言う人はいない。

犯人は故意に人をはねたが、不注意な運転者のクルマにはねられて亡くなる人は毎日何十人もいるだろう。通り魔は怖いが、確率からいえば交通事故に合う可能性の方がずっと高い。僕は通り魔のクルマに故意に轢かれるのも、悪意の無い人の運転ミスで轢かれるのも同じくらい怖い。

家電製品なんかは間違った使い方でも人が怪我をしたり死んだりしたらものすごく問題になってメーカーの責任が追及されるが、クルマの事故についてはそうならない。クルマの安全性についてももっと問題にするべきではないかと思う。例えば、クルマの前方数十メートル以内に人や物があるとスピードが出せないようにすれば良い。技術的には今すぐできそうな気がする。

もともとクルマ好きで整備士になろうとしたこともあった犯人は、派遣社員としてクルマを作る仕事をしていて、その待遇への不満も犯行のきっかけだったようだ。もしかすると、クルマを共犯にするという意図もあったのかも知れない。

橋下知事2008年02月04日

僕は大阪府民になって20年くらいたつが、府政にはあまり関心がなくて知事選に投票した記憶がない。でも今回は府政の破産状態が明らかになったこともあり、誰がいいか真剣に考えた。考えてみると有力3候補のうち誰が成っても前の官僚天下り知事よりはマシのように思える。でもどの候補にも不満はある。

誰がいいかは別にして、きっと橋下弁護士が当選するのだろうと思ったが、橋下弁護士は物事をやや単純化して捉え過ぎる傾向がある。3人のなかでは一番信頼できない。しかし他の2人も積極的に支持したいほどでもない。橋下弁護士が当選しても構わないような気もする。それなら投票に行くこともないかとも思う。

でもとにかく投票に行った。誰かを当選させるためではなく、投票率に寄与するためである。投票率が高いほど、固定票を持つ特定勢力の発言力が弱くなる。とにかく誰でもいいから投票するのだ。誰に入れるかは投票用紙に向かってから考える。

結局、批判票として橋下弁護士以外に入れたが、橋下新知事の行動力には期待できそうな気もする。大阪府庁は映画「ブラックレイン」でしか見たことがないが、何か怪しいモノが潜んでいそうだ。毒を以って毒を制する感じで頑張ってもらいたい。

餃子問題2008年02月01日

中国製冷凍餃子に殺虫剤が入っていた事件で、回収対象の商品リストが報道されたときに冷凍庫の中身を思い浮かべたが、よく考えたら我が家では最近外国製の冷凍食品は買わないようにしていたのだった。中国産の食材は過去にも何度も問題を起こしていて、中国人でも信用していないくらいである。やはり不安だ。日本製だけを買っていてもミートホープ事件には巻き込まれてしまったが、日本では内部告発があるだけマシだ。

自国製を買う理由は他にもある。外国から輸入するとフードマイレージが大きくなるうえに、冷凍食品の場合は冷凍しながら運ぶ分余計にエネルギーが必要である。車でエアコンを使うと燃費が悪くなるのと同じだ。国内の食材でもなるべく冷凍よりは冷蔵、冷蔵より常温のものを買いたい。

そもそも外国から食品を買うと食料自給率が下がる。今回の騒ぎをきっかけに国産食材の需要が高まれば、日本の農業にとって良いことだと思う。日本の食材を買うと高くつくが、なるべくご飯をたくさん食べるようにすればどうだろう。いろいろな食べ物の値段が上がりつつある昨今、お米の値段だけは下がっているのだから。

「偽」2007年12月13日

今年を表す一文字は「偽」であるということになって、清水寺で大きな字を書いたお坊さんが情けないと憤っていた。「日本人の倫理観の低下」みたいなことを言って嘆く人もいる。

今年は消えた年金をはじめとしていろいろな偽りがバレたし、その偽りに対して憤るのはもっともだ。しかし、最近バレているいろいろな偽りの多くは、何年も何十年も前から行われてきたことなのだから、今年特に悪いことがたくさん起きたと考えるのはおかしい。

いろいろな偽りがどんどんバレるようになったのは良いことである。今までバレなかっただけで、昔からいろいろな偽りはあったのだ。最近バレているのは内部告発が多くなったからで、今まで起きなかった内部告発が起きるようになったのだから、日本人の倫理観は向上したと捉えるべきではないか。

あるいは、今までは「偽りを告発せずに内部の利益を守る」というのが日本人の倫理観だったのだが、構造改革によって内部というものの範囲が曖昧になった結果、倫理観の現れ方が変わっただけなのかもしれない。

どちらにしても、「大企業だろうが役所だろうが、ウソ偽りを続けているといつかはバレて潰れるかもしれない」という状況が生まれたので、世の中から偽りが少なくなることが期待できる。

フード・マイレージ2007年11月01日

フードマイレージという言葉が広まりつつあるようだ。「食品の重さ×輸送距離」がフードマイレージで、その値が小さい方が望ましい。同じ食品を買うなら、近くで生産されたものの方が輸送にエネルギーがかからないという単純な理屈だ。

日本人一人当りフードマイレージは年間5000t・km(トン・キロメートル)とかそんなものらしい。これはよその国に比べて何倍も多い。食料自給率が低くて外国産の食品ばかり食べているからだ。日本は省エネ先進国だとかいうけど、フードマイレージ的には世界最悪なのだ。これはいかんでしょう。

基本的にはフードマイレージの考え方には賛成である。僕も以前から食品を買うときにはなるべく生産地が近くのものを買うようにはしてきた。でも同じ野菜で近くで採れたものの方が高い場合もある。国内産が外国産の2倍の値段だったりする。ちょっとぐらいの差なら国内農家への応援という観点からも国内産を選ぼうとも思うが、2倍となるとちょっと考えてしまう。日々の献立を考えるだけでも大変なのに、悩みの種が増える。

自分の食生活を省みると、フードマイレージが一番悪そうなのは時々買うフランス産の炭酸ガス入りミネラルウォーターだ。1リットルのペットボトルを年に10本買うとして、0.01t×10000km=100t・kmくらいになる。焼酎やウィスキーを割るのにちょうど良いのだが、これを飲むために無駄な石油を焚いているわけである。今後は国産の水道水を使うことにしよう。これからの季節はお湯割りでいいし。

食品問題2007年08月03日

最近の中国食品問題で僕がヤラレタと思ったのは、給水器用のミネラルウォーターの半分が偽物で水道水だったという件である。出張で上海に6週間滞在した時、水道の水が汚いので歯を磨くのにも給水器の水を使っていたのだが、あれは五分五分の確率で水道水だったのか。

最初「水道水を詰めてるんじゃないか?」と疑うには疑ってみたのである。でも交換用の新品のボトルを見るときれいなシールで封がしてあったので、まあ大丈夫だろうと思ったのだった。しかし偽物はそのシールも偽造しているのだという。僕の考えは甘かった。

上海で食べたものの中で一番旨かったのは、香港式飲茶チェーンのシュウマイである。このシュウマイの特徴は肉が荒挽きであることで、以来僕はシュウマイは荒挽き肉に限ると思い込んでいる。最近我が家では食材を購入するのに生協の宅配を利用しているのだが、食材のリストに「あらびき肉しゅうまい(冷凍)」というのを見つけた時にすぐ注文してしまった。上海で食べたシュウマイとは比べものにならないが、おでんに入れたらまあまあだったので、その後もう一度注文した。

先月、生協から宅配された荷物に「お知らせ」の紙が入っていて、「あらびき肉しゅうまい」の代金298円×2が返金されていた。材料にミートホープ社のミンチが使われていたのだという。ヤラレタ。もうどこから弾が飛んでくるかわからない。

中国産には何が入っているか不安だし、日本産の加工食品も怪しい。なるべく素性の分かる食材を買って、自分で一から料理した方が良さそうだ。そうするとお金も手間も掛かるが、あんまり安さや便利さばかり追求した結果が今の状態なのかなとも思う。それにしても、ただでさえ毎晩のオカズを考えるのは大変なのに、悩みのタネを増やさないで欲しいものである。食品業界、ええかげんにせえよと言いたい。